経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)

第14回評議員懇談会(座長 川勝評議員会副議長)/3月29日

産業競争力強化、次期WTO交渉、新会計制度、
環境問題について懇談


評議員110名の出席を得て、評議員懇談会を開催し、産業競争力強化、次期WTO交渉、新会計制度、環境問題に関する経団連の取り組みを報告するとともに、懇談した。

  1. 川勝評議員会副議長挨拶
  2. 経団連には、経済再生への道筋を力強くリードしてほしい。また、良好な国際ビジネス環境を実現するための国際的ルール作りに関し、積極的な役割を果たしてほしい。

  3. 今井会長挨拶
    1. 景気を本格的な回復軌道に乗せるには、供給サイドの強化が必要である。この問題を官民で論議する場として産業競争力会議が設置され、本日第1回会合が開催された。

    2. 公的資本注入によって、金融機関が不良債権の処理を迅速に進め、金融仲介機能を早期に回復することを期待している。一方、借り手である企業は、選別融資の対象とならないよう、バランスシートをきれいにする必要がある。

    3. 2001年にかけて順次実行される企業会計の改革は、企業経営者にとって大変厳しいものであるが、企業活動がグローバル化する中、前向きに取り組んでいかなければならない。

    4. さらに、社会保障制度を持続可能なものへと再構築すること、国・地方を通じて小さい政府を実現する必要がある。

    5. 景気の先行きは、楽観できる状況にはないが、官民あげた努力で99年度後半にはプラス基調に乗ると期待しているし、そうしなければならない。

  4. 活動報告
    1. 産業競争力の強化に向けた取り組み:前田副会長
      1. 産業競争力会議では、今後検討すべき課題として、

        1. 過剰設備の処理を中心とした供給構造の改革、
        2. 雇用の確保、
        3. 人材の育成、
        4. 国家プロジェクトの重点化、政策資源の投入、技術開発力の強化、
        5. 中小企業の活性化、
        6. ベンチャー企業の育成、
        7. 高コスト構造の是正、
        8. リーディング・インダストリーの育成、
        9. 為替の安定化、
        の9項目が整理され、次回会合では、供給構造の改革を検討することになった。

      2. これらは、経団連が提言してきた内容とほぼ一致している。既存産業の国際競争力の強化を目指した環境整備については、産業問題委員会が、将来のリーディング・インダストリー創出のための中長期的重点国家プロジェクトの推進については、産業技術委員会が、新産業・新事業創出の推進と環境整備については、新産業・新事業委員会が窓口となり、対応することになろう。

    2. 次期WTO交渉への対応:北岡貿易投資委員長
      1. これまでの検討では、

        1. 鉱工業品の関税引下げ、
        2. サービス分野の一層の自由化・市場開放、
        3. 保護貿易的措置の防止、
        の実現に努力すべきであるとの意見が出されている。この他、政府調達制度の見直し、知的財産権保護の強化、WTOの紛争処理制度の強化、投資に関する包括的なルール作り、電子商取引の取り扱いの明確化なども重要課題である。また、日本の交渉体制整備の一環として、官民の意見・情報交換の場として連絡協議会の設置を検討してはどうかと考えている。

      2. WTO等を通じた多角的な貿易・投資体制を補完する形で諸外国との二国間・地域貿易協定締結の可能性を積極的に検討していく時期に来ているのではないかと考えている。

    3. 新会計制度への対応:藤村経済法規共同委員長
      1. 日本版ビッグバンの実現に向けたインフラ整備の一環として、ここ数年、国際的に通用する会計開示基準の整備が進められてきた。中でも

        1. 連結財務諸表中心のディスクロージャーへの転換、
        2. 税効果会計、
        3. 有価証券に対する時価会計、
        4. 年金会計の導入、
        は企業の損益計算書や貸借対照表に大きな変化をもたらす。これらの検討段階から産業界の意見の反映に努めるとともに、株式持合解消の受け皿など関連諸制度の環境整備の方策を提言し、その実現を働きかけてきている。

      2. グローバルな活動を展開する以上、企業評価の物差しである会計基準の国際化に前向きに対応していく必要がある。同時に、それらがいたずらに企業経営のあり方や株式市場へ悪影響を与えないよう、引き続き環境整備を進めていく。また、会員企業への広報にも力を入れていきたい。

    4. 環境問題への取り組み:寺門環境安全委員会地球環境部会長
      1. 温暖化対策の枠組み策定の過程で産業界の意見の反映に努めている。まず、温暖化対策に関する基本方針については、原子力の扱いが最大の争点であったが、産業界の働きかけの結果、CO2の削減目標達成に不可欠な原子力の推進が明記されることになった。また、サマータイム制の導入は、国民の温暖化問題への関心が高まり、省エネルギー化につながることが期待されることから、経団連としても賛成している。

      2. 先般、一昨年取りまとめた経団連環境自主行動計画の第1回フォローアップを行なったところ、需要増に伴い、一部業界ではCO2排出量が増加している。引き続き協力をお願いしたい。

      3. 有害化学物質については、事業者自身による適切な管理・使用、排出削減努力を対策の中心にすべきであると主張している。その一環として、環境汚染物質の排出・移動登録調査に自主的に取り組んでおり、この経験を踏まえて、関連法案に産業界の意向を反映させていく。

  5. 評議員から出された意見
  6. アンリツ 中川社長:
    労働移動の円滑化が急務である。また、大学入試・教育改革によって有能な人材を育成する必要がある。

    富士電機 加藤副社長:
    労働移動の円滑化には、中高年層の再訓練等が必要である。また、先端技術に関する大学の研究成果を企業に取り入れる仕組みが必要である。

    阪和興業 北社長:
    次期WTO交渉では、短期資本の急激な移動が貿易や産業活動に与える影響などにも留意すべきである。

    センコー 澤辺会長:
    企業の社会的責任、排出者責任という観点から、産業廃棄物処理の適正化に取り組む必要がある。

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