経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)

ルクセンブルグ大公国 ジャン大公殿下歓迎昼食会(経済5団体共催)/4月5日

健全なルクセンブルグ経済

−安定成長、物価安定、低失業率、財政均衡


経団連、日商、日経連、経済同友会、日本貿易会の経済5団体では、国賓として来日したルクセンブルグ大公国のジャン大公殿下を歓迎し、昼食会を開催した。また、4月7日には、ルクセンブルグ経済投資セミナーおよびジャン大公殿下を迎えてのレセプションを経団連、海外事業活動関連協議会(CBCC)、ルクセンブルグ大公国政府、ベルゴ・ルクセンブルグ市場協議会で共催するとともに、同大公殿下は今井経団連会長と懇談した。

  1. ジャン大公殿下スピーチ要旨
  2. ジャン大公殿下

    1. 両国経済関係の発展
    2. ルクセンブルグと日本の経済関係の発展は、世界経済におけるグローバリゼーションの進展の一例である。30年前、日本企業のルクセンブルグへの進出は1社もなかったが、今日では通信技術やロボット、化学、輸送部門で、10指にあまる企業が製造を行い、あるいは部品の輸送を行っている。さらに、金融センターでは、9金融機関が取引している。息子のアンリ皇太子は、過去20年間にわたり定期的に訪日し、両国のビジネス関係を育成してきた。それも一助となり、日本はルクセンブルグにとって積極的な投資家であり貿易相手国となっている。

    3. 健全なルクセンブルグ経済
    4. マーストリヒト条約には、厳しい経済基準が定められている。ルクセンブルグはこのプロセスの当初から、ヨーロッパ諸国で唯一それらの基準をすべて満たしていた国であった。今日でも、ルクセンブルグのインフレ率は非常に低く、財政は均衡しており、また国内総生産に占める財政赤字の割合は同条約によって認められている最大限度額の10分の1以下となっている。こうした健全な経済のおかげで多くの雇用が創出され、失業率はヨーロッパで最も低く保たれている。慎重な財政政策により、過去15年間政府は着実に減税を行うことができた。日本企業がわが国に進出してきたのにはこういう背景によるものである。私は、将来もこの流れが続くことを希望し、また、さらに多くの皆様がルクセンブルグに投資してくれるよう期待する。

  3. ポース副首相・外相スピーチ要旨
    1. 類似している発展の仕方
    2. ルクセンブルグと日本は、面積、地理、歴史、文化など、一見殆ど共通項が見出せないようだが、両国はかなりよく似た発展の仕方をしてきた。ルクセンブルグも日本も、自国経済の発展に天然資源を頼みとすることができなかった。非常に早い段階から、経済意欲を高めるような法的環境作りをし、競争で優位に立てるようなニッチを見つけることが政策担当者にとって絶対不可欠であった。両国とも、経済の将来を市場の力にすべて任せてしまうのでなく、自分たちの手で経済をつくってきた。そこから確固たる結果が得られたことは両国とも同じであり、われわれは共にそれぞれの過去50年間の経済の成果に満足している。

    3. 続ける安定成長
    4. ルクセンブルグは、わずかここ20年ほどで、工業に大きく依存した国家からサービス主体の経済国へと変貌を遂げた。歴代政府は一貫して、市場のニーズに十分対応できるような柔軟な政策の枠組みを作り上げ、健全な経済を打ち立ててきた。第二次大戦終結以来、国内総生産は安定成長を続けている。1998年は、国内総生産成長率が5.5%、インフレ率が1.4%、失業率が3.1%であり、特によい1年となった。

    5. 経済が好調の理由
    6. わが国経済がこのように非常に好調である理由は、いくつかの要素が組み合わされていると考えられる。
      第1は、ルクセンブルグには、わが国の自然の利点を有効に活用できる政治経済体制があることである。小国であることが非常に有利に働いている。即ち、官僚機構が最小限に抑えられることである。しかし、何よりも議会が急速に変化する環境にすぐ対応して法制を変更できる点が大きい。
      第2は、わが国の地理的条件である。ラテン文化とドイツ文化の交差路にあるルクセンブルグは、高い教育を受けたマルチリンガルの労働力を擁している。ルクセンブルグを拠点にすれば、物理的にも言語的にもヨーロッパの他地域とのコミュニケーションは非常に容易になる。
      第3は、わが国を外の世界に開かれたものにするという政府の決定であった。第二次大戦後、わが国は国家の中立性を放棄し、新しい世界秩序の形成に積極的な役割を果たす道を選択した。ルクセンブルグは、国連、NATO、欧州連合など、多くの国際機関の創立メンバーとして名を連ねている。
      欧州連合創立メンバー6カ国の一員として、ルクセンブルグは欧州連合の構成および方針を作成する上で影響力を発揮してきた。これまで欧州連合が歩んできた道は正しいものであり、ルクセンブルグとその経済にもよい影響を及ぼすと確信している。

    7. 両国間貿易
    8. 日本からルクセンブルグへの輸出額がルクセンブルグからの輸入額を1対4の割合で上回っていることは、皆様にとって喜ばしいことである。わが国の日本からの輸入額は、ここ2年ほど大変なペースで増加している。私は、わが国産業界が今の流れを逆にするために、一層努力すべきであると感じている。

    9. 健全な日本経済を望む
    10. 日本はヨーロッパの主要貿易相手国のひとつであることから、われわれは、ここ数週間、とりわけ株式市場で見られる上向きの兆しが、不況の終わりを告げるものであって欲しいと切に願っている。われわれは健全な日本経済を心から望んでいる。それにより、世界経済の安定とバランスが図られるからである。日本がまもなく立ち直り、新たな活力をもって、近年重要度を増してきた国際経済の舞台での役割を演じてくれるものと確信している。


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