国土・住宅政策委員会 土地・住宅部会(部会長 田中順一郎氏)/3月30日
国土・住宅政策委員会土地・住宅部会では、政府の都市計画法抜本改正の動向を踏まえつつ、今後の都市政策のあり方について検討を進めている。3月30日には、東京大学大学院工学系研究科の浅見泰司助教授から「これからの街区・敷地形成のあり方」について説明を聴き、意見交換を行なった。
現在、日本の土地は敷地が細分化されがちな傾向にある。敷地の細分化は採光や通風など建物の環境を劣化させ、建てづまり感を引き起こす。容積率の高い建物を建てることができないために、土地の有効利用が行なわれない。都心部で土地利用の効率が低いことは、開発のスプロール化を促す要因にもなる。
これまでにもこうした問題点は指摘され、敷地の共同化の必要性が叫ばれてきたが、既得権の制限は困難であり、専門家の派遣、さらには地権者に対するモラルの形成、補助金による経済的インセンティブの付与などの誘導策もうまくいかなかった。今後、敷地の共同化を進めるためには、従来の取り組みに加えて、定期借家権の導入等により権利者の既得権を弱めるとともに、共同化を拒む場合には何かの代償を払わなければいけないような、共同化へのより強いインセンティブを形成することが一層重要である。
そもそも既存の都市計画論はまず理想の都市像を描き、それに対応して都市計画を策定するというものであった。しかしこれは新規の開発には適しているが、既成市街地の再編には対応しにくい方法であり、時代の要請や地域の特質に応じた要請に対応できないという問題が生じている。実際の都市の状況を見ながら新しい原則を打ち立てることが必要である。
まず第1に現在の都市計画制度には、「開発規模が大きければ大きいほど、民間側で提供すべき公共用地の割合が増大する」という「規模の原則」がある。この結果、大規模開発より小規模開発が有利になり、小規模開発が連担すれば、公共用地の不足は必至である。また税制も小規模な敷地に有利であり、小規模な開発にインセンティブを与える結果となっている。
第2に現行制度は敷地単位の規制のみで隣接敷地相互の空間関係や集合関係のあり方など「集合の原則」がない。また法定容積率は敷地に一定率を乗じるものであり、敷地を供出すると容積率が減る仕組みとなっている。
第3に、欧州では「計画なきところに開発なし」という建築不自由の原則があり、開発者は計画の策定を歓迎するが、日本では建築は自由なのが原則であり、計画の策定は自由を奪うものとして歓迎されにくい風土にある。私はこれを開発者の動機に適合する市街地更新のみが進むという意味で「動機適合の原則」と呼んでいる。
これら3つの原則をパラダイム転換し、
第1に、規模の原則を転換するために、例えば500m四方(小学校区)を一単位として必要な公共施設量(道路、公園、学校など)を定め、地区内の開発には、規模に関わらず、未整備分の面積割合を減歩するようにしてはどうか。こうすれば都市基盤整備が進んだ地域では減歩は少ない。
第2に、交渉費用軽減のため、交渉方法を明示・限定すべきである。その際、一団地の総合的な設計を行ない、地区の基盤状況や環境条件を改善する場合には、柔軟な設計を可能とするのみならず交渉を有利にできるようなルールづくりが必要である。
第3に、再開発事業を一団地化して進める場合、計画の質を評価して規制を緩和すべきである。
第4に、街区の外周道路の中心線までをその街区の権利面積として定め、容積率や建ぺい率はこれに基準値を掛けるグロス主義規制を導入すべきである。街区内の空間利用権は区分所有化し、街区全体を運命共同体とすることによって、街区全体の計画の質が高まれば、街区の価値が高まる仕組みを導入すべきである。
第5に権利調整にあたっての交渉決定権は単純な多数決によるのではなく、公共提供などを行なえば交渉力が高まる仕組みにすべきである。
第6に、権利調整に反対する地権者が従来の用地を使い続ける場合、期間に応じて補償額を切り下げていくべきである。
こうした対策を講じていくことにより、良好な街区・敷地形成が期待される。