国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 金谷邦男氏)/4月9日
地方振興部会では、中心市街地の活性化策を中心として、これからの都市のあり方について検討を進めている。4月9日には、まちづくりNPOの活動を支援してきたハウジングアンドコミュニティ財団の鎌田宜夫専務理事から、まちづくりにおけるNPOの取組みと課題について説明を聞き、意見交換を行なった。部会ではその後、このヒアリング内容も踏まえ、これからの都市のあり方に関する報告の取りまとめに向け、審議を行なった。
まちづくり市民活動は、1970代には、マンションや道路の建設反対運動などが主流であったが、やがて計画参加型が増え、最近では提案型・事業型の活動が増えてきている。例えば、
こうしたまちづくり市民活動の主体となっているNPOの特徴は、町内会と比較してみると明らかになる。NPOの活動は基本的に地域の内外に開かれており、会員には女性が多い。町内会の活動が情報伝達、合意形成を旨とし、全員参加をルールとしているのに対し、NPOの活動は問題解決、事業の推進を旨とし、会員の参加は自由である。町内会は長老支配になりがちであるが、NPOには建築や都市計画、金融などの専門家が参加している。行政や地元の町内会などとの折衝を行なう渉外の専門家もいる。
さらに、まちづくりNPOの中で、活力のあるNPOは地域に活動拠点を持つという特徴を持つが、まちづくり、住まいづくりの多様な活動を自ら行なう「マルチ活動型」、地域のまちづくりNPOのコンサルタント、技術支援、資金助成を行なう「まちづくり支援型」、地域のまちづくり以外の活動にも根を広げる「ネットワーク型」、広い地域の様々なNPO活動の交流拠点を持つ「広域交流型」など、さまざまなタイプの展開をしている。
これまで公共セクターが行なってきたまちづくり活動は、公平性を重視しがちで、ともすると「過剰サービス」「非効率サービス」「制度が硬直的」との批判を受けてきた。一方、民間営利セクターの活動は、効率性を重視しがちで、ともすると生活行為を過度に産業経済化し過ぎるところもあった。成熟化、少子・高齢化、国際化、ストック型社会の到来により、公共セクターの公平性の論理、民間営利セクターの効率性の論理のいずれでも解決できない問題が増えてきたが、NPOは、地域の生活者の多様なニーズにきめ細かく応えることが可能で、このような問題の解決に適している。そして、地球環境問題の解決、地域雇用機会の拡大など、政治的にも大きな意味を持つ活動にもつながっている。
今後、NPOが果たすべき役割としては、中心市街地に夜間人口を取り戻し、安心して歩ける街、いざという時に介護の手を差しのべられる街を実現すること、すなわち「自律した地域社会の形成」である。そのためには住民支援のために公共、民間営利、民間非営利の各セクターが果たす役割の分担を再検討する必要がある。またNPOの活動とあわせてコミュニティビジネスを育成したり、NPOが求めている、先進事例や支援団体に関する情報の提供や、金融、技術、人材養成の支援をする仲介組織を整備することが必要である。日本ではトヨタ財団の活動を皮切りにさまざまな団体、基金がまちづくりNPOを支援してきているが、今後さらに支援を広げていくためにはNPOへの寄付金を控除する税制の導入が課題となる。