経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)

国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 金谷邦男氏)/4月9日

まちづくりにおけるNPOの役割


地方振興部会では、中心市街地の活性化策を中心として、これからの都市のあり方について検討を進めている。4月9日には、まちづくりNPOの活動を支援してきたハウジングアンドコミュニティ財団の鎌田宜夫専務理事から、まちづくりにおけるNPOの取組みと課題について説明を聞き、意見交換を行なった。部会ではその後、このヒアリング内容も踏まえ、これからの都市のあり方に関する報告の取りまとめに向け、審議を行なった。

  1. 鎌田宜夫専務理事説明要旨
    1. 多様なまちづくり市民活動
    2. まちづくり市民活動は、1970代には、マンションや道路の建設反対運動などが主流であったが、やがて計画参加型が増え、最近では提案型・事業型の活動が増えてきている。例えば、

      1. 長期耐用性を持つスケルトン住宅を定期借地権方式で安価に提供する上での建設・管理・コーディネートを行なうなどの「参加型すまいづくり」の活動(「つくば方式」)、
      2. 老朽化した集合住宅の建て替えをスムーズに実施できるよう、居住者の立場にたって支援するといった「集住更新」の活動、
      3. 公共の賃貸住宅建設制度を活用して、高齢者も入居でき、診療所や障害者のための補助用具を販売する店舗を併設するマンションの建設を実現するなどの「高齢化問題」対応活動、
      4. 外国人やホームレスの住まいについて支援する「居住問題」対応の活動、
      5. 地域の地形、周辺環境を生かした「環境共生」活動、
      6. 「防災・復興」に向けた活動、
      7. 街並みマップの作成、公園や緑地の管理などを行なう「住環境整備・改善」活動、
      8. 住まい教育、
      など、多岐にわたる。

    3. まちづくり市民活動の特徴
    4. こうしたまちづくり市民活動の主体となっているNPOの特徴は、町内会と比較してみると明らかになる。NPOの活動は基本的に地域の内外に開かれており、会員には女性が多い。町内会の活動が情報伝達、合意形成を旨とし、全員参加をルールとしているのに対し、NPOの活動は問題解決、事業の推進を旨とし、会員の参加は自由である。町内会は長老支配になりがちであるが、NPOには建築や都市計画、金融などの専門家が参加している。行政や地元の町内会などとの折衝を行なう渉外の専門家もいる。
      さらに、まちづくりNPOの中で、活力のあるNPOは地域に活動拠点を持つという特徴を持つが、まちづくり、住まいづくりの多様な活動を自ら行なう「マルチ活動型」、地域のまちづくりNPOのコンサルタント、技術支援、資金助成を行なう「まちづくり支援型」、地域のまちづくり以外の活動にも根を広げる「ネットワーク型」、広い地域の様々なNPO活動の交流拠点を持つ「広域交流型」など、さまざまなタイプの展開をしている。

    5. NPOの可能性
    6. これまで公共セクターが行なってきたまちづくり活動は、公平性を重視しがちで、ともすると「過剰サービス」「非効率サービス」「制度が硬直的」との批判を受けてきた。一方、民間営利セクターの活動は、効率性を重視しがちで、ともすると生活行為を過度に産業経済化し過ぎるところもあった。成熟化、少子・高齢化、国際化、ストック型社会の到来により、公共セクターの公平性の論理、民間営利セクターの効率性の論理のいずれでも解決できない問題が増えてきたが、NPOは、地域の生活者の多様なニーズにきめ細かく応えることが可能で、このような問題の解決に適している。そして、地球環境問題の解決、地域雇用機会の拡大など、政治的にも大きな意味を持つ活動にもつながっている。

    7. 今後の課題
    8. 今後、NPOが果たすべき役割としては、中心市街地に夜間人口を取り戻し、安心して歩ける街、いざという時に介護の手を差しのべられる街を実現すること、すなわち「自律した地域社会の形成」である。そのためには住民支援のために公共、民間営利、民間非営利の各セクターが果たす役割の分担を再検討する必要がある。またNPOの活動とあわせてコミュニティビジネスを育成したり、NPOが求めている、先進事例や支援団体に関する情報の提供や、金融、技術、人材養成の支援をする仲介組織を整備することが必要である。日本ではトヨタ財団の活動を皮切りにさまざまな団体、基金がまちづくりNPOを支援してきているが、今後さらに支援を広げていくためにはNPOへの寄付金を控除する税制の導入が課題となる。

  2. 意見交換
  3. 経団連側:
    NPO活動が始まるきっかけは何か。活動の核となる人はどうやって生まれるのか。
    鎌田専務理事:
    地域に対する危機感、問題意識の共有、行政への整備事業推進の要請など、きっかけはさまざまだが、当初は反対運動、陳情型であった活動が、事業型、提案型に変わっていくことは多い。NPOの核となる人は不可欠である。人物の生まれる条件は不明であるが、全て魅力的な人たちである。少なくとも誰かがやれと言ったから活動が始まったということはない。

    経団連側:
    失敗したNPOにはどのような事例があるか。
    鎌田専務理事:
    当財団でNPOの活動の発展経験の有無を調査したが、地域内で完結してしまい、活動頻度も少ないグループ、また助成、独自収入が得られず会員の持ち出しが多いグループは発展が少ない。発展していくグループでは、従来からのリーダー、協力者の重視に加え、活動資金の確保、住民の参加などにも重点を置いている。発展のないグループでは協力支援者に対する期待が大きく、情報も自ら発信するというより支援を求めている。

    経団連側:
    自治体、町内会とも良好な関係を持つことができるNPOの条件は何か。
    鎌田専務理事:
    人と人との信頼関係以外にない。


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