経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)

産業技術委員会 知的財産問題部会(部会長 丸島儀一氏)/4月1日

特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針(原案)について 公正取引委員会から説明を聞く


公正取引委員会は、2月22日、「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針(原案)」を公表し、産業界をはじめ広く一般から意見を募っている。そこで産業技術委員会知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キヤノン特別常任顧問)では、公正取引委員会事務総局取引部山木取引企画課長から標記原案について説明を聞くとともに懇談した。

山木康孝公取委取引企画課長説明概要

  1. 指針策定の経緯・目的
  2. 公正取引委員会は、1989年に国際契約の審査基準として示した「特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法の規制に関する運用基準(現行運用基準)」を見直し、新たな指針を定めることとした。
    今回の見直しの背景には、

    1. 現行運用基準が制定された当時には存在していた国際的契約の届出制度が規制緩和の流れの中で廃止され、事業者自身による独禁法上の判断の必要性が高まり、独禁法上の考え方を一層明確に示す要請が高まっていること、
    2. 従来の「不公正な取引方法」にあたる事例だけでなく、「私的独占」や「不当な取引制限」にあたる知的財産権関係の事例が増えていること、
    3. 独禁法に関する他のガイドライン等との平仄を合わせる必要があること、
    などがある。
    今回の見直しは規制の強化や緩和を目指したものではなく、あくまで独占禁止法上の考え方をより明確にするものである。

  3. 指針(原案)のポイント
  4. 今回の指針(原案)のポイントは以下の通りである。

    1. 不当な取引制限(カルテル等)や私的独占の観点からの考え方を示した。

    2. 特許法等の権利の行使と認められる行為については、独占禁止法23条により適用除外とされているところ、「権利の行使と認められる行為」についての考え方を整理した。

    3. 現行運用基準では、不公正な取引方法に該当するかどうかについて、いわゆる黒、灰、白の3類型に行為を分類していたが、「原則として違法となる行為(黒)」、「一定の場合に違法となる行為(灰色)」、「原則として違法とならない行為(白)」の3類型に分類する三分法は維持するものの、灰色類型については更に「違法となるおそれが強い行為(濃い灰色)」を区別することにより違法となる蓋然性の程度を再整理した。

    4. 特許やノウハウのライセンス契約に限らず、著作権や商標権など特許・ノウハウ以外の知的財産権についても指針(原案)で示された考え方が準用されうることを示した。

    公正取引委員会としては、4月16日までに寄せられたパブリックコメントを踏まえ、今年夏には指針を公表したい。


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