経団連くりっぷ No.101 (1999年5月13日)

経団連報告書/4月20日

「日墨自由貿易協定のわが国産業界への影響に関する報告書」を公表


昨年11月の日本メキシコ経済協議会でのセディージョ・メキシコ大統領の提案を受けて、経団連日本メキシコ経済委員会の「日墨協定に関する懇談会」では、日墨間に自由貿易協定が締結され、関税障壁や投資上の障害が撤廃された場合のわが国企業への影響について検討した。その結果を、このほど標記報告書として取りまとめ、公表した。以下はその概要である。

  1. メキシコとの協定を検討する意義
  2. わが国企業にとってメキシコは、巨大な国内市場のみならず、米州における戦略拠点としても重要である。また日墨の政治・経済関係は良好であり、メキシコ政府はわが国との協定締結に積極的な姿勢を示している。さらに両国の産業間には競合関係が少なく、国内から強い反対が出る可能性が小さい。このように、メキシコはわが国が自由貿易協定締結を検討していく上での必要条件を満たしている。

  3. 協定の影響
    1. 貿易面では、メキシコの輸入関税の撤廃により、全般的に日本からの輸出品の競争力が高まるとともに、新製品導入のリードタイムの短縮等が期待される。特にエレクトロニクス完成品や、エレクトロニクス・自動車部品については、関税撤廃のメリットが大きく、輸出拡大が見込まれる。ただし自動車については米州内での生産体制が確立しているため、高級車等ニッチの車種を除いて、協定による日本からの輸出拡大効果は小さい。その他、プラント設備、化学品、鉄鋼製品等の日本からの輸出拡大が見込まれる。逆にメキシコから日本への輸入については、食品などメキシコが比較優位を有する分野で拡大する可能性がある。

    2. 投資面では、自動車、エレクトロニクス分野の部品関税の撤廃により、日本企業のメキシコでの現地生産のコスト競争力が高まる。その結果、特にエレクトロニクス分野では、米国やアジアからメキシコへの一層の生産の移転が期待される。協定によるパフォーマンス要求の禁止も、安定的なビジネス活動を行なう上で重要である。他方で、日本からの部品輸入の増加に伴い、現地の日系部品企業が一定の事業見直しを迫られる可能性がある。

    3. 日本企業がメキシコのインフラ関連等のプロジェクトに参加する際には、日本からの資材調達割合が大きく、北米自由貿易協定(NAFTA)により非関税で米国からの資材調達ができる米国企業に比べ、競争上不利となっている。関税撤廃により、米国企業と同じ競争条件を確保することが可能になる。

  4. 双方に利益もたらす協定の早期締結を
  5. 日墨間の協定は、貿易・投資両面でわが国産業界に大きなメリットをもたらすと考えられる。今後、両国の官民がさまざまな場で本件に関する検討を進め、協定が双方に利益をもたらす形で早期に締結されることが望まれる。


くりっぷ No.101 目次日本語のホームページ