第560回常任理事会/5月11日
常任理事会では、先般の日米首脳会談の概要ならびに、わが国が当面する主要外交課題について、柳井俊二外務事務次官から説明を聞いた。
先般の総理訪米の目的は、民主主義、自由、人権尊重など日米両国が共有する基本的な価値観を確認、強化することにあった。ワシントンでの首脳会談、共同記者会見、米国財界人ならびに上下両院指導者との懇談に加えて、ロサンゼルス、シカゴなど地方都市で一般国民とも触れ合う機会を持つこともでき、成功裡に終わった。
日米関係全般:
両国が価値観を共有していること、ならびにその他の国・地域との関係においても日米関係が重要な意味を持っていることを確認した。
米国国民にも、日米関係は他の二国間関係とは質的に異なることが理解されたと認識している。
日米安保関係:
クリントン大統領は、ガイドライン関連法案の衆議院通過を評価していた。また、サミットの沖縄開催については、非常に良いアイデアであるとの発言があった。
サミットの沖縄開催によって、沖縄の振興など未来指向の気運が高まるとともに、基地問題を解決する上でも良い雰囲気が醸し出されることを期待している。
朝鮮半島:
総理から、抑止と対話のバランスをとりつつ、北朝鮮政策を進めていきたい旨発言、また、拉致疑惑についても指摘した。クリントン大統領からは、北朝鮮へのミサイル技術の移転防止を重視する発言があった。
首脳会談に先立ち、日米韓の間で北朝鮮政策へのすり合わせを行なったが、今後もこの3カ国間の協調が重要である。
インドネシア:
総理から、6月7日の総選挙の自由、公正かつ円滑な実施を日本として支援する旨説明した。8月8日に行なわれる東チモールの自治に関する住民投票についても支援を行なう予定である。
コソヴォ:
総理から、ロシアのチェルノムイルジン特使の和平努力に期待する旨発言した。ワシントン訪問中の同特使とも会談し、コソヴォ問題解決に果たすロシアの建設的な役割に期待を表明した。また、難民支援、周辺国支援、難民帰還等のために2億ドルの支援策を決めたことを説明した。大統領もこれを高く評価した。
なお、5月6日のG8緊急外相会合での合意を基に国連安保理で決議を作成しようとした矢先にベオグラードの中国大使館誤爆があったため、中国、ロシアの協力が得にくい情勢となった。
中国:
大統領から改革路線支援が重要との発言があったほか、中国のWTO早期加盟を実現することの重要性について意見の一致をみた。ただし、この問題についても、上記誤爆で交渉が進めにくくなった。
ロシア:
大統領から、日本が行なっているロシア改革支援とロシアの原潜解体への協力に感謝する旨の発言があった。
日米経済関係:
国際金融システムの強化に向けて協力することで合意した。また、総理から日本の経済対策を説明したところ、大統領からは、
日米貿易関係:
大統領から、板ガラス、保険、自動車、政府調達、鉄鋼等の個別問題について指摘があったが、これらが首脳会談に影を落とすことはなかった。また、大統領から、APECのEVSL(早期自主的分野別自由化)をWTO交渉に反映させたいとの発言があった。
米国の好景気がどこまで続くかが一つのポイントである。また、日本の景気回復への期待も非常に大きい。来年は大統領選挙が控えており、米国の景気が下降線を辿り、日本からの輸入増加が続くことにでもなれば、日本に対する風当たりが強くなるおそれもある。
以上のほか、日米間では、コモン・アジェンダ(麻薬・テロ対策、地球環境保全等の地球的規模に立った共通課題)について広範な協力を進めている。
新宮澤構想を含む約800億ドルのアジア支援策は、国際的に評価されている。なお、カンボジアのASEAN加盟は、同国ならびにASEANの安定化に寄与するものと期待される。
中東和平プロセスを支援しているが、イスラエルの総選挙を5月17日に控えており、これが終了するまでは具体的な展開が期待できない情勢にある。また、サウジアラビアにおけるアラビア石油の原油採掘権の延長を政府としても後押ししている。
以上のほか、日本外交の新しい展開としては、アフリカ開発会議のフォローアップ、石油・天然ガス資源の豊富な中央アジア・コーカサス地域への外交努力などがあげられる。