99年度日本トルコ経済委員会 定時総会(委員長 武井俊文氏)/4月27日
日本トルコ経済委員会は、99年度定時総会を開催し、98年度収支決算・事業報告ならびに99年度収支予算・事業計画を審議・可決した。なお従前トルコ側から提案されていた、訪バルカン諸国日ト合同ミッションの派遣は、訪問予定国の情勢を鑑みて延期することとした。以下は定時総会の来賓として招いたヤマン・バシュクット駐日トルコ大使の発言要旨である。
欧州、バルカン半島、コーカサス、中東、南アジア、中央アジア諸国の文化的・経済的中心に位置しているトルコは、OECD諸国中第5位の人口を有し、2020年には欧州で最大の人口を有する国となる。人口増加率は高く、高齢化の問題はなく、個人消費支出も増勢の一途にある。
トルコでは建国以来75年間、西洋志向の政教分離を国是として、憲法、多党制政治、民主的な議会と選挙システム、独立した司法システムと報道の自由を維持しており、透明性の高い国家に成長してきた。
先週、国会の総選挙が行なわれた。
95年に実施された前回選挙と比較して、
トルコ経済は急速に成長した。過去20年間の平均経済成長率は4.8%にのぼる。ただし98年の成長率は金融・財政引き締め政策や、ロシアを始めとする国々における経済危機の影響を受けてやや鈍化した。
現在トルコ政府は、IMFの指導下で引き締め基調のマクロ経済政策運営を行ない、インフレの抑制に取り組んでいる。98年初には年率100%近かったインフレ率は98年末には54%に低下し、IMFは、トルコの努力を評価している。99年の目標インフレ率は35%であり、さらに向こう数年内に1桁台まで抑制することに尽力していく。なお、失業率は6.2%に過ぎず、OECD諸国平均の11%を大きく下回る。
貿易面では、総輸入額は98年で450億ドルであり、輸出額は270億ドルである。GNPに占める貿易の比率は35%。産業構造の変化に伴い、輸出に占める工業製品の比率は88.5%にのぼり、輸入に占める資本財と中間製品の比率は88%に達している。
外国企業の対トルコ投資についてみると、96年には40億ドルを記録したが、97年と98年は減少傾向にある。主な投資国は、ドイツ、オランダ等の欧州諸国、米国、そして日本と続いている。
観光は、トルコにとって重要な外貨獲得源である。昨年1年間で、1000万人がトルコを訪れ、70億ドルの外貨をもたらした。日本からの観光客は、いまだに8万3,000人と総観光客数の1%にも満たない。
98年には630億ドルの外貨収入を得た。現在、トルコ中央銀行は、輸入6ヵ月分の外貨準備を保有しており、短期債務の返済にも十分対応しうる水準にある。
対米関係は、トルコにとって政治的にも経済的にも重要である。米国も、トルコを世界の10大成長国のひとつに位置づけている。米国はトルコにとって2番目の貿易相手国であり、輸出入比率はともに8%を超える。
もちろん、トルコにとって最大のパートナーはEUである。トルコはEUと関税同盟関係にあり、EU加盟候補国のひとつである。
貿易面では、輸出入比率ともに50%を超えており、関税同盟締結の結果、EUにとってトルコは、相互に関税および数量規制なしに貿易できる域外最大のパートナー国となっている。
欧米以外では、日本が重要な位置を占めている。物理的な距離は遠いものの、文化的な親近感を共有している。
トルコにとっての対日貿易は、輸入が4.5%、輸出が0.4%と極めてバランスを欠いており、貿易・投資両面を通じて拡大均衡を目指していく必要がある。投資面では、日本の対トルコ投資はトルコにとって第8位に過ぎない。
ロシアとの関係も、トルコにとっては重要である。トルコの輸出は工業製品が中心であり、ロシアからの輸入は天然ガスが中心である。また、トルコ企業によるロシア国内の建設事業への参画は、外貨収入に大きく貢献している。
アラブ諸国、イスラエル、バルカン諸国、黒海周辺諸国、NATO加盟国、イスラム会議機構加盟国、そして経済協力機構(ECO)加盟の中央アジア諸国との関係等、トルコの外交関係は幅広く展開され、すべて良好である。
とくに中央アジア・コーカサスのカザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギスタンとアゼルバイジャンは、民族的にも、言語的にも、宗教的にも、文化的にも、トルコと極めて近い。これらの国々はまた、トルコを政教分離を実現したイスラム国家の政治的モデルとしてとらえており、トルコ政府はこれら諸国の体制変革がスムーズに行なわれるよう、積極的に協力してきている。そのためトルコは、これらの国々への民間企業の進出も支援しており、日本企業にとって、トルコ企業との合弁推進の可能性は高いと考える。