経団連報告書/5月28日
1996年にCSデジタル放送が開始され、2000年にはBSデジタル放送が開始される予定であり、衛星放送は、将来、中核的メディアとなる可能性がある。そこで、経団連では、情報通信委員会 通信・放送政策部会(部会長:倉地正 東京三菱銀行専務取締役)の下に、ユーザー、民放各社、メーカー、NTTに会員以外のオブザーバー(NHK、日本衛星放送、BSデジタル各社、CSデジタル放送会社など)を加えた打合せ会を設置し、衛星放送産業の発展のための課題や環境整備のあり方について検討し、5月20日の通信・放送政策部会の了承を経た上で、今般、標記報告書を公表した。以下はその概要である。
メディアが多様化する中で、衛星デジタル放送産業の発展のためには、利用者の立場・利便性の向上を重視した事業展開が必要である。また、放送と通信の融合やグローバル化など、放送をとりまく環境変化に適切に対応するとともに、他のメディアとの相互補完を進め、メディア間のシナジー効果を図る必要がある。
衛星デジタル放送産業の拡大均衡を図る観点から、官民の衛星放送関係者は、イニシャルコストの削減や、国民に支持される番組の制作・配信などにより、利用者が加入しやすい仕組みづくりに向けた取組みが重要である。また、技術革新に対応するとともに、ソフトの生産性向上と多元的利用が求められる。
東経110度CS放送問題は、わが国のデジタルネットワークを形成するためのメディア全体のグランド・デザインを検討しつつ、既加入者を含めた利用者全体の利益を考えながら、その方向性を出す必要がある。
今後は、利用者の利便性の向上の観点から、21世紀に向けた新しい情報流通メディアを実現する環境を整備することが重要である。その一方策として、利用者全体の利便性に配慮しながら、東経110度で共用性のあるBSデジタル放送とCSデジタル放送を実現することも考えられる。そのためには、既存CSデジタル放送の利用者の保護など、多くの課題があり、官民の関係者の取組みが期待される。
新しい衛星デジタル放送産業が自律的に発展していくには、事業者の自助努力とともに、新しい産業に挑戦しやすいような環境の整備が必要である。