経団連くりっぷ No.103 (1999年6月10日)

社会保障制度部会(部会長 高野盛久氏)/5月19日

医療制度改革と保険者機能の強化について懇談


社会保障制度部会では、昨年11月より、保険者の機能強化について、関係者と意見交換している。今回は滝口進M.H.I.代表取締役(医学博士・東京女子医科大学講師)を招き、医療制度改革と保険者機能の強化について説明を受けるとともに、懇談した。

  1. 滝口博士発言要旨
    1. 保険者をめぐって
      1. 現在の医療保険制度は危機的状況だが、改革の方向性が集約されそうにない。
      2. 社会保険という枠の中で改革を進めるならば、保険者の存在が不可欠である。
      3. 保険者は保険料の徴収・支払業務に終始し、被保険者や企業の方に目が向かなかった。今後は保険加入者のための『総合健康エージェント』になるべきである。

    2. 保険者機能の強化の基本的考え方
      1. 保険者の業務は、保険料の徴収、審査・支払等の保険業務と、健康診断、保養所経営等の健康管理業務に分かれる。
      2. 保険業務を効率化し、健康管理業務が科学的裏付けの下に最大限の効果を得られるようにする必要がある。

    3. 保険者機能強化の具体的な取り組み
      1. 現行制度と規制の下でも、保険者がレセプト情報を集めて、診療・受診動態を解析すれば、プロセスの評価はできる。
      2. 制度の一部手直し、通牒の変更で、支払基金を通さず、保険者と医療機関が診療報酬の一部を直接請求・決済できると考える。

    4. 混合診療の制度化の是非
      1. これまでは手厚い社会保障としての医療のもとでそこそこのサービスが極めて公平に提供されてきたが、選択と競争が欠如し、著しく非効率となっている。
      2. 効率を高めるために、市場原理の導入は理にかなうが、全てを一律に規定する現行制度の下ではおぼつかない。
      3. 本当に社会保障として必要な医療と、それ以外の医療を科学的に区別し、後者に選択と競争を導入することが望ましい。つまり、科学的な混合診療の容認である。
      4. その際、「エージェント」としての保険者が、医師と患者の間の情報の非対称性を解消することが不可欠である。

  2. 懇 談
  3. 経団連側:
    保険者と医療機関が直接交渉を行なうと、レセプトの大量処理が必要で、保険者が二の足を踏むのではないか。
    滝口博士:
    レセプトのデジタル化や保険者と医療機関間のネットワーク化が進めば、十分対応できると思う。

    経団連側:
    既に個々の医療機関がコンピューター化を進めており、医療情報の統一化を進めるのは非常に困難ではないか。
    滝口博士:
    支払基金が持つ電子レセプトのマスターを利用すれば、統一化は不可能でない。保険者が医療機関に対し、インセンティブを与えることも考えられる。



くりっぷ No.103 目次日本語のホームページ