経団連くりっぷ No.104 (1999年6月24日)

1999年度OECD諮問委員会 総会/5月31日

OECDをめぐる新たな潮流


99年度のOECD諮問委員会(委員長 河村健太郎氏)総会を開催し、98年度事業報告・収支決算ならびに99年度事業計画・収支予算を審議、承認した。審議に先立ち、外務省の大島経済局長より、最近のOECDの活動状況等について説明を聞いた。大島局長は、5月26〜27日のOECD閣僚理事会の模様を、初めての試みとなった非加盟国との対話や貿易・投資をめぐる議論を中心に説明し、「市民社会」との関係が今後のOECDにとって新たな重要課題となることを指摘した。

  1. 非加盟国との対話
  2. 世界経済に占める先進国の比重が低下するなかで、今回の閣僚理事会では初めて中国、インド、ロシア等の非加盟国を招待し対話を行なった。非加盟国側は経済危機を教訓に国内制度改革の必要性を認めつつも、国民の支持が重要であることを強調した。また加盟国側が次期WTO交渉への積極的な参加を求めたのに対し、非加盟国側もさまざまな意見はあるものの、基本的に交渉の重要性を認めた。

  3. 多国間投資協定(MAI)
  4. OECDでは95年よりMAI交渉を進めてきたが、98年の閣僚理事会の直前になって、実質的に交渉がストップしてしまった。同年秋に再開しようとしたものの実現には至らなかった。今次閣僚理事会コミュニケには盛り込まれなかったが、事実上は交渉の終了が加盟国間で確認された。

  5. 次期WTO交渉
  6. WTOにおいて2000年からラウンド交渉を開始することを加盟国間で確認するとともに、以下の点について議論が行なわれた。交渉対象については、日本・欧州は鉱工業品関税の引き下げや投資ルールを含めた「包括的な」交渉とすることを主張したが、農業やサービスを重視する米国が抵抗し、「広範囲な」交渉という文言に落ち着いた。交渉期間については、3年を目標とすることでほぼコンセンサスができている。交渉方式については、日本・欧州が主張する一括受諾方式と、米国が推す早期収穫方式(early harvest;合意に至った分野から順次実施に移す方式)が併記される形となった。

  7. 遺伝子組換作物
  8. 遺伝子組換による食品の改良について、この分野で技術的に先行する米国と、安全性に疑問を呈する欧州との間で議論が高まっている。今後、バイオテクノロジーをめぐる貿易のあり方が重要な課題となると思われ、わが国も立場を明らかにしていく必要がある。

  9. 市民社会との関係
  10. 「市民社会」とは、環境、人権・労働、貧困・債務救済といった分野のNGOの総称である。欧米では無視できない存在となっており、MAI交渉中止の要因ともなった。今後の国際交渉においては、「市民社会」との関係で透明性、公開性が求められるため、ますます交渉が困難になることが予想される。


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