経団連くりっぷ No.105 (1999年7月8日)

なびげーたー

10歳に達した経団連の草の根交流

国際本部長 島本明憲


CBCC(Council for Better Corporate Citizenship)は海外事業活動関連協議会の英文別称で、これと国際文化交流部会は経団連の国際活動の2つのソフト…

  1. CBCCは1989年に日系企業の対米投資急増が投資摩擦を引き起こすとの懸念から誕生した。当時、対米投資の中には有名ゴルフ場や高級ホテルの購入もあり、ゴルフ場での日本人のマナーも話題となった。
    こうした状況に対し、CBCCは日系企業が現地社会から理解されるために草の根レベルで貢献活動を進めることを提唱し、悪いイメージの払拭に努めた。今日、日本からの直接投資や雇用の創出等も定着している。各社の努力やCBCCの活動もあって、日系企業の地域貢献活動への取組みは成果を上げ、進出先社会で「良き企業市民」として認知されるまでに現地化が進んだ。

  2. 91年から96年まで、毎年、立石信雄CBCC副会長を団長とする「コミュニティ・リレーションズ調査団」が全米各州を訪問した。企業人トップが結局21州を自ら訪問し、対話して相互理解を深めた。こうした活動が契機となり、マイノリティ問題、男女雇用機会の均等や障害者雇用などの社会問題、コーポレート・ガバナンス、報酬制度などの問題を先駆的に拾い上げた。
    CBCCは新たな10年に向け、会員の関心あるテーマを今後とも先駆的、積極的に取り上げるとともに、アジアにも活動の範囲を拡大していくこととしている。

  3. 他方、国際文化交流活動は、CBCCに先立ってASEANを中心に目にみえる文化交流活動を開始してきた。
    80年代後半のアジアへの経済至上主義的進出への反省から、経済と文化は車の両輪を旗印に活動を続けてきた。プロジェクトの選択基準は、人と人とのつながり、生活様式の相互理解、若い世代、双方向性、現地日系企業・組織とのタイアップ、効果の継続性、既存組織の基金集めではないものなどであった。こうした点は今後も変わらない。反省点はフォローアップや広報の不足および評価の不十分さにある。

  4. 最近、CBCCは「アメリカ人にとっての宗教の役割」、「アメリカらしさのイメージと米国の多様性」および「訴訟社会」をテーマに、それぞれハロラン芙美子、能登路雅子および阿川尚之の各氏による講演会を開催してきたが、いずれも盛会であった。多くの人が問題の背景にある根底を知ることに強い関心を有している。阿川尚之氏の講演は、アメリカの憲法に最も感心したというフランス人トクヴィル氏の米国観察(1830年代)に触れ、憲法をソフトへの着眼と表現して、トクヴィル氏の卓見性を賞賛した。
    CBCCおよび文化交流ともに、新たな門出に向けて今後の活動を実務的に検討しているが、企業人トップに、実地にアジアを視察していただき、本質的、ソフト的なものを見抜いていただきたいと考えている。


くりっぷ No.105 目次日本語のホームページ