関東地方の地域づくりに関する懇談会(座長 金谷邦男 地方振興部会長)/6月15日
新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」(1998年3月閣議決定)では、広域的な地域戦略の重要性が訴えられており、経団連としても、広く関東圏を鳥瞰し、環状道路の整備をはじめとする諸プロジェクトに注目していく必要がある。そこで、古川国土・住宅政策委員長、田中・今村両共同委員長はじめ国土・住宅政策委員会、輸送委員会等の幹部は、建設省関東地方建設局(関東地建)が取り組む主要プロジェクトの概要等に関して説明を聞き、同局と意見交換を行なった。
新全総では、新しい国土軸の形成がうたわれており、東北から九州までの各ブロックにおいて活発な論議がされているが、関東圏では、地域間連携が相対的に弱いのが実状である。関東地方のあり方が、わが国全体に大きな影響を与えるため、関東地建としては、国の関係機関や自治体が連携を取りながら地域づくりに取り組んでいくべきであると考えている。
21世紀を目前に控え、厳しい財政、少子・高齢化等の状況下、国民のニーズに即した対応を考えていかなければならない。例えば、公共事業の透明性・効率性の確保のための事業評価を的確に行なったり、市民社会における新たな合意形成の手法を確立していく必要がある。
関東地建としては、
関東地建の99年度の当初事業費は、約7,374億円(内訳:道路関係=53%、河川関係=31%、営繕関係=14%)を計上しており、毎年順調に増加している。
しかしながら、関東地方の公共工事に限ってみれば、ここ10年間、全国平均と比較して、公共工事着工総工事評価額の減少の割合が顕著であり、大都市圏の財政の厳しさを物語っている。
また、建設関連の技術の生産性が他業種と比較して低いため、建設省主導の技術開発により、コスト縮減および環境対策を進めている。今後は、多自然型護岸工法等、さまざまな技術開発の成果をデータベース化し、一般公開していきたいと考えている。
洪水時の河川水位より低い土地に居住する人口の比率は、わが国全体で49%、関東地方では34%と、米国の9%に比べて著しく高い。関東の想定氾濫区域内人口は1,384万人を数え、域内資産は77兆円にものぼる。こうした河川に対する関東地方の脆弱性に対処するとともに、渇水に対する安定的な備蓄を行なう上からも、壊滅的な洪水被害を防ぐスーパー堤防事業を推進したり、首都圏2,700万人の飲み水を支える利根川水系の水資源開発施設を早期に完成させるなど、治水および利水の状況を改善していく必要がある。
関東地建では、21世紀に向けて、道路整備の立ち遅れに緊急に対応すべく、指定区間24路線・管理延長約2,300kmについて計画的な道路整備を推進している。
道路施策に当たっては、事業の重点化やコスト縮減に努めるとともに、パブリック・インボルブメントと呼ばれる住民参加の方式等を活用していくことが重要である。
とりわけ、東京外かく環状道路(外かん)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)をはじめとする高規格幹線道路等の整備は、都心に流入する通過交通の分散を図る上で、非常に効果的であり、物流の効率化に資する重要なプロジェクトである。
また、新宿駅南口において、甲州街道の新宿跨線橋の架け替えと併せて、JR線路上空等に基盤を整備し、駐車施設、歩行者空間とJR施設を重層的に構築する事業が98年度から始まっている。同事業は、公共施設と民間施設との一体的整備による双方の事業費軽減効果のみならず、民間施設の投資誘発効果が見込まれており、都市構造の再編、地域活性化支援の観点から、今後の進捗が大いに期待されている。
東京一極集中の是正と国土の均衡ある発展を目的とした「多極分散型国土形成促進法」(88年)にもとづき、国の主な機関が入居する「さいたま広域合同庁舎」が、大宮・与野・浦和地区の「さいたま新都心」に集団移転する。新都心にふさわしい、首都圏の新たな広域行政拠点としての多様で高度な機能を備えた新しい庁舎が、99年度末完成を目途に作業が進められており、官公庁施設の整備等を通じて、より良い地域づくりに貢献していきたいと考えている。