経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

なびげーたー

政府開発援助(ODA)の推進方策を検討

国際本部副本部長 江部 進


ODA推進体制の改革、環境円借やアジア向け特別円借款の実施、最貧国(LLDC)債務負担の一層の削減などODAをめぐる状況が動き出している。

  1. 経団連は、1997年4月にODAに関する提言を行ない、推進体制の一元化と官民連携による援助の実施を訴えた。その趣旨は、責任体制を明確化し、民間のノウハウと経験を活用することによって、厳しい財政のもと効率的で、効果的な援助を展開すべきということである。
    昨年成立した中央省庁等改革基本法は、ODAの推進に当たって民間の人材を活用することを謳い、ODAの企画立案に関する調整の中核を外務省とした。これは当会の提言に沿う改革の方向へ歩み出すものとして評価しうる。しかし、基本法を読む限り、援助政策の企画立案および執行の一元的責任体制が明確に示されているとは言い難い。2001年1月にスタートする新たな省庁体制のもとで、機動的で、効率的な運営がなされることが肝要である。
    官民連携では、96年の当会意見を反映し、国際協力事業団(JICA)の専門家派遣事業として、「民間セクター・アドバイザー専門家派遣」制度が97年度に創設された。民間企業の経験ある専門家を開発途上国に派遣し、途上国の経済開発に資するべく知的支援を行なうもので、当会は案件や専門家の推薦で協力を行なっている。官民連携の好例として事業の拡大が望まれる。

  2. 一方、このような改革と併行して、ODAをめぐる注目すべき動きが続いている。参議院における「ODA基本法」制定の動き、「輸銀」と「基金」を統合する「国際協力銀行」の本年10月発足、特別優遇金利による環境円借款や経済危機の影響を受けたアジア諸国等に対する特別円借款の実施、OECD開発援助委員会(DAC)におけるLLDC(最貧国)向け援助のアンタイド化の動きなどである。
    また、最近DAC事務局が発表した98年の各国ODA実績によれば、わが国は106.8億ドルと第2位の米国(81.3億ドル)を25億ドル上回って、8年連続のトップドナーとなった。一方、先に開催されたケルン・サミットは、「ケルン債務イニシアティブ」を打ち出し、重債務貧困国の債務負担を一層軽減することを決定した。これにより、最も負担が大きくなるおそれがあるのは日本であると言われる。

  3. このような状況を踏まえ、国際協力委員会(共同委員長:香西昭夫氏)では、「国際協力銀行」に対する注文を手始めに、ODAの援助メニュー(円借、技術協力特に人材育成、さらには投資など)のあり方、ODAに果たす民間の役割等について検討に着手する。
    会員各位のご意見を頂戴できれば幸いである。


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