経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

経団連意見書/7月19日

「物流効率化の推進に関する提言」を建議


輸送委員会(共同委員長:濱中昭一郎氏、常盤文克氏)では、標記提言を取りまとめ、政府・与党関係方面に建議した。以下は意見書の概要である。

はじめに

あらゆる産業活動と国民生活の基盤となる物流の効率化・円滑化を推進し、わが国の高コスト構造の是正、ひいては国際競争力の強化を図るべきである。

1.物流インフラの重点的整備

21世紀を見据え、環境問題等社会的な制約にも配慮しつつ、わが国の競争力強化を図るうえで効果の高い、真に必要な交通・物流インフラを重点的かつ効率的に整備すべきである。

  1. 基幹的な物流インフラの整備
    新東京国際空港・関西国際空港の拡充、中部国際空港の早期整備、首都圏第三空港の整備、第二東名・名神高速道路をはじめとした高規格幹線道路の整備、中枢・中核国際港湾の整備などを着実に実現すべきである。

  2. 円滑な物流を妨げているボトルネックの解消
    環状道路の整備(東京圏における圏央道、外かん、中央環状線の部分完成、大阪圏における第二京阪道路等、名古屋圏における東海環状自動車道等)、立体交差化、河川横断橋梁の整備、右折車線の改良、東京湾中ノ瀬航路の浚渫や第三海堡の撤去工事計画、伊良湖水道航路の安全性確保等

  3. 環境問題への対応とマルチモーダル施策の推進
    地球環境問題への関心の高まりのなかで、環境負荷が少なく、長距離大量輸送の面で効率の高い鉄道や海運の利便性を向上させ、その活用を促進するなど、マルチモーダル施策の推進が重要である。

    1. 鉄道貨物輸送の推進
      政府としても鉄道貨物に係るインフラ整備に対して積極的に支援策を講じるべきである。例えば、京葉線や東京臨海副都心線を活用した貨物ルートの整備、山陽本線において長編成列車の運行を可能とする地上インフラの整備、E&Sコンテナ荷役方式の整備等

    2. 各輸送モード間の連携強化
      陸・海・空などの輸送モード間の連携強化に役立つインフラ整備を推進すべきである。東京貨物ターミナル駅から大井埠頭への引込線の延長、空港・港湾等へのアクセス道路の整備、国際海上コンテナの陸上輸送の確保(橋梁補強等の道路整備、鉄道輸送における橋・トンネルの改修、国際海上コンテナ取扱駅の増設等)、中枢国際港湾等における大水深ターミナルの重点的整備、船舶の大型化に対応した内貿コンテナ専用のターミナルの整備

    3. 都市内物流対策
      物流拠点の整備、ポケットローディングシステムの導入等のトラックの荷捌きの効率化等、「都市圏交通円滑化総合計画」の策定等

2.物流に関するソフト・インフラの改善

規制緩和の推進や情報化、標準化の促進等により、インフラの使い勝手の改善が必要である。

  1. 海運の利用促進ならびに港湾利用の効率化

    1. 輸出入及び港湾諸手続などの簡素化(ワンストップ行政の実現 )
      出入港、検疫、通関等の各種行政手続の連携一体化、関税法に基づく輸出許可制の届出制への移行

    2. 港湾のフルオープン化(365日・24時間体制の推進)
      夜間入港制限の撤廃、荷役作業の365日・24時間体制の確保、危険物の夜間入港・夜間荷役制限の緩和等

    3. 港湾運送事業法の見直し
      運輸政策審議会最終答申(主要9港について需給調整規制の廃止<事業免許制から許可制への移行>料金認可制から届出制への移行)の早期かつ着実な実施

    4. 内航海運運送に係る規制緩和
      政府支援のもとに内航海運暫定措置事業の早期終了、堪航能力の優れた内航大型船の20海里以遠航行の緩和等

  2. 道路貨物運送に係る情報化と規制緩和の推進

    • ITSの推進とりわけETCの早期普及
    • 道路運送に係る各種規制緩和(分割可能貨物の一括輸送に係る総重量規制の緩和、「特殊車両通行許可」を取得せずに通行可能な車両の高さ制限の緩和等、特殊車両通行許可に係る申請手続の簡素化・情報化)
    • 市街化調整区域における物流施設の開発許可の緩和

  3. 鉄道貨物輸送の利用促進

    • 需要に見合ったダイヤ設定、スピードアップ、運賃制度のさらなる弾力化等
    • 鉄道貨物インフラ整備に対する政府の積極的な支援

  4. 空港処理容量の拡大等
    空港管制の運用方式の見直しや滑走路占有時間の短縮などによる首都圏空港処理容量の拡大

  5. 輸送モード共通の課題
    物流システムの情報化・標準化、一貫パレチゼーションの推進

3.交通インフラ整備の財源に係る課題

わが国では、交通インフラ整備の財源は、相当部分が利用者負担によって賄われている。大競争時代においては、国際的に重い負担となっている物流に係る公租公課を極力引き下げることが求められる。

  1. 物流に係る公租公課等

    • 着陸料(国際水準の約3倍)、航行援助施設利用料、航空機燃料税の引下げ
    • とん税、特別とん税、入港料など港湾関係の公租公課等の引下げ
    • 道路に係る公租公課等の引下げ

  2. 物流インフラの整備と財源のあり方
    全国一律的なインフラ整備を見直し、費用便益効果の大きい物流インフラを目標年限を設定して、戦略的かつ効率的に整備すべきである。重点的に整備すべきインフラ整備については、一般財源を投入すべきである。
    来年度予算においても、引き続き、「物流効率化による経済構造改革特別枠」を設けるとともに、費用対効果分析やディスクロージャーの徹底や公共事業コストの一層の低減を図るべきである。
    インフラ整備を効率的に行なう観点から、交通・物流インフラについて、PFI手法の導入を積極的に検討すべきである。

おわりに

「2001年を目途にコストを含めて国際的に遜色ない物流サービスの実現を目指す」という総合物流施策大綱の最終目標を達成すべく、省庁間の連携を強めつつ、政府を挙げて取り組んでいく必要がある。
民間としても、引続き、配送方式や積載率等の工夫や情報化、標準化の推進など、自らの自助努力によって物流の効率化を進めていく必要がある。


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