経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

環境安全委員会 地球環境部会・廃棄物部会合同会合(委員長 辻 義文氏)/6月18日

当面する環境政策の基本的考え方


地球温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題、有害化学物質問題等をめぐり、政府部内にさまざまな動きが見られ、産業界としても政府内の環境政策の動向について認識を深めていく必要がある。そこで、通産省の太田信一郎環境立地局長を招いて当面する環境政策の基本的考え方についてきくとともに種々懇談した。
また、経団連が実施した第2回PRTR調査の結果、産業廃棄物の不法投棄原状回復基金への平成11年度の対応方針について、それぞれ諮り、了承を得た。なお、政府におけるサマータイム導入に向けた検討状況について、辻委員長より説明を行なった。

  1. 太田局長説明要旨
    1. 地球温暖化対策の推進
    2. COP3で決められた、2010年におけるわが国の温室効果ガス排出量の1990年比で −6%の削減目標の達成に向け、具体的な対策が始動している。98年6月には、わが国の地球温暖化対策の大宗を示すものとして「地球温暖化対策推進大綱」を策定し、さらに99年4月には、改正省エネ法および地球温暖化対策推進法が施行された。2010年の目標達成のためには今後も継続的な取組みが必要である。
      産業構造審議会、総合エネルギー調査会、産業技術審議会、化学品審議会の4審議会において経団連の環境自主行動計画に基づく各業界の取組みをフォローアップしているが、通産省としてもフォローアップを温暖化対策の着実な実施のために重要な課題と位置づけている。
      柔軟性措置(排出権取引、共同実施、CDM)については、COP6までに具体的な内容を決めることとなっているが、途上国の警戒感が強く、先が見えてこない。環境庁、外務省とも連携して、COP6に向けた取組みを行なっていく。

    3. 循環型経済システムへの取組み
    4. 廃棄物問題への取組みについては産業構造審議会で検討してきたが、環境と経済の統合、資源・エネルギー利用効率の最大化による投入・排出の極小化、ライフスタイルや価値観の転換等を進めていく必要があり、事業者、消費者、行政の役割分担、パートナーシップが重要になる。技術によりブレイクスルーできる問題もあるため、技術開発も重視し、環境関連技術の支援も行なっていく。通産省では、環境産業の市場規模は現在の約15兆円から2010年には約37兆円、雇用規模は現在の約64万人から2010年に約140万人と予想している。
      循環型経済システムの構築に向け、廃棄物・リサイクル対策の対象を、排出量の多いもの、含有資源に有用性が認められるもの、処理困難性が伴うものとし、省資源化や長寿命化による廃棄物の発生抑制等の「リデュース」対策、製品・部品の再使用等の「リユース」対策の本格的導入を図る必要がある。
      また、製品・サービスの市場への供給者であり、製品のライフサイクル全般を通じて環境対応を行なう能力を有する事業者の役割は大きい。もちろん、消費を通じて製品の選択を行なうとともに、排出者でもある消費者の役割も非常に重要である。現在、OECDにおいて、「拡大生産者責任」の議論が行なわれているが、一律の枠組みによる事業者への責任転嫁に終始しては本質的な解決にはつながらない。どのような仕組みにすればリサイクルが進むかを考えていくとともに、分野ごとの特性を踏まえつつ、社会全体としての実効性・効率を最大化するよう、事業者、消費者、国・地方公共団体の適切な役割分担を設定することが必要である。既に日本では容器包装リサイクル法、家電リサイクル法等、物ごとの特性に合わせた対応をしており、今後も、個別の業種の特性を踏まえた取組みを続けていく。また、リデュース、リユースの促進に向け、廃棄物処理法に係る規制緩和を含む法的枠組みの見直し等についても検討を行なう。地方公共団体の一般廃棄物処理の従量制による有料化の問題は、厚生省が検討しているが、具体的な進め方によって効果があがると考えている。

    5. ダイオキシン対策
    6. ダイオキシン対策法案に関し、与野党間で調整がなされてきたが、今般、自民党、公明党、民主党の三党合意がなされ、近く国会に提出される見通しとなっている。論点の1つであった耐容1日摂取量については「4ピコグラム以下で政令で定める」こととなった。また、直罰規定については、法施行後1年間の猶予期間の後、適用することとなったが、ピコグラムレベルの測定は精度が不安定となることから、排出基準を上回る測定値が出たとしても、その後、都道府県知事が2回以上計測し、いずれも違反である場合に限り直罰を課すこととした。また、公害健康被害補償法の適用については、今後の検討課題とし、法案からは削除した。
      3月に策定したダイオキシン対策推進基本指針のなかで、今後4年以内に全国のダイオキシン類の総排出量を平成9年比で9割削減する目標を立てているが、現在の規制が守られれば新たな規制をしなくても達成は可能と考えている。また、基本指針において廃棄物の減量化の目標量を半年以内に設定することも盛り込まれたことから、9月末までに、一般廃棄物、産業廃棄物を合わせた国全体の減量化の目標を設定する必要があり、産業界の意見もきいていきたい。

  2. 辻委員長説明要旨
  3. 政府におけるサマータイム導入に向けた検討状況

    地球環境問題が深刻さを増していること、省エネおよび温室効果ガス削減に効果があり国民の意識改革が期待できること、世論調査では過半数が導入賛成としていることから、政府が主宰する「地球環境と夏時間を考える国民会議」において、サマータイムの導入を図るべきとの結論に達した。また、国民会議では、今後、制度面での国際的調和を図るとともに、実施前に2年程度の周知・準備期間を設けることが必要であると提言している。現在、議員立法によるサマータイム法制化の動きがあるが、状況は流動的である。


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