経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

社会保障制度委員会(共同委員長 福原義春氏、福澤 武氏)/7月6日

社会保障制度改革の基本的考え方について懇談


今年5月の経団連総会で社会保障制度委員会が発足した。第1回目の会合では、橘木俊詔京都大学経済研究所教授を招き、社会保障制度改革の基本的な考え方、特に公的年金の財源方式のあり方について説明をきくとともに、懇談した。

  1. 橘木教授説明要旨
    1. 基礎年金は税方式に転換すべき

      1. シビルミニマムとして引退後の最低限の生活保障を賄うには、税収で賄うのが単純明快である。
      2. 税方式に転換すれば、徴収部署が1つになって徴収コストが低くなる。
      3. 給付と負担に関する世代間の争いを回避できる。
      4. 国民年金における未納者・未加入者というフリーライダー問題を解決できる。

    2. 税方式の財源は累進消費税に

      1. 経済理論的にいうと、直接税より間接税の方が資源配分に中立的である。
      2. 間接税には逆進性というデメリットがある。単一の比例税率ではなく、累進度を持たせた消費税を導入すれば、間接税でも公平性を確保できる。
      3. 第1ステップとして、今の消費税に財別の税率を設けることで、累進度を持たせる。

    3. 税方式移行に伴うその他の論点

      1. 社会保険料の事業主負担分の取扱いをどうするかは、事業主負担分の転嫁と帰着を検証しなければならない。
      2. 今の基礎年金の平均給付額(1人約5万円)は生活保護水準より低い。引退後にかかる生活費がいくらなのか計算する必要がある。
      3. 財政の硬直化を招くので、消費税の目的税化には反対である。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 経団連側:
    今の直接税体系でも所得捕捉が困難なのに、累進消費税で、所得捕捉が本当にできるのか。
    橘木教授:
    納税者番号制度の導入と名寄せのために金融機関の協力が必要だ。日本人は脱税に対して甘く、厳格に罰則を適用するのも必要ではないか。

    経団連側:
    公平性を保ち、逆進性を回避するために累進性が必要とのことだが、消費税の複数税率化とどこが違うのか。
    橘木教授:
    第1ステップでは、財ごとに税率を変えるので、消費税の複数税率化と全く同じだ。それを実現するにはインボイスを導入しなければならない。

    経団連側:
    累進消費税の導入に向けた第1ステップと第2ステップの間には大きなギャップがあるように感じる。
    橘木教授:
    今の日本では、第1ステップを実現するだけでも難しいことは認めるが、こういう考え方があることを広く国民に知ってもらいたい。


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