経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

訪パナマ経団連ミッション結団式(団長 内田事務総長)/6月30日

運河返還を控えたパナマ


経団連では、7月10日から12日までパナマにミッションを派遣する。そこで、結団式を行なうとともに、日本貿易振興会の小林志郎横浜貿易情報センター所長より最近のパナマ政治および経済情勢等について、日本輸出入銀行の稲澤泉課長代理よりパナマ運河返還に伴うプロジェクト概要について、それぞれ説明をきくととともに懇談した。

  1. 小林所長説明要旨
  2. 9月1日に大統領に就任するモスコソ女史は、現野党のアルヌルフィスタ党である。議会では少数派であるため、困難な政権運営が予想される。
    2000年までにパナマ運河、両岸地帯及び米軍基地が米国から完全返還される。返還地域は、運河自体を扱う運河庁と、米軍基地などの運河周辺の地域を扱うARI(両洋岸地域庁)の2つが管轄する。
    ARIは観光、輸出加工区、港湾、学術都市の4分野を開発目標として設定している。例えば、台湾はデービス基地で輸出加工区の建設を進めている。
    労働市場に関しては、労働者保護の法律が多く、現政権は改正の必要性を認識しているが、住民の6割といわれる貧困層の支持によって当選した次期政権が、今後どのような政策を取るかは不明である。
    パナマの投資環境は、米州の中心という地理的な要素、為替リスクの無さ、投資インセンティブの存在、良好なインフラ整備状況、金融センターの存在、高い生活水準といった特徴を備えている。
    コロン・フリーゾーンは世界第2位の規模であり、約2,000社が進出している。輸出・販売および物流の拠点としてのみでなく、国際ロジスティック・センターも数多く操業している。

  3. 稲澤課長代理説明要旨
  4. パナマ運河返還地帯の長期開発計画のうち初期5年間のインフラ開発計画である「キンケナル・プログラム」を、ARIは管轄している。具体的には、太平洋側、大西洋側の運河返還周辺地帯における道路網と上下水道等のインフラ整備、パナマ運河の水位を調節する湖周辺の土壌改善、森林保全を目的としている。プロジェクト総額は7,300万ドル程度である。
    現在はまだ調査中の段階であるが、日本企業の進出にとって有益なプロジェクトがあれば、優先して検討したい。

  5. 質疑応答(要旨)
  6. 経団連側:
    今後のパナマ運河の開発計画はどうか。
    小林所長:
    2015年にパナマ運河の許容量が限界に達するとの見通しが出されている。最も現実的な計画は、15万トン級の船舶の通航を可能にする第3閘門の建設であり、60億ドルを必要とする。すべては2000年以降のパナマ政府の計画次第である。


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