経団連くりっぷ No.107 (1999年8月12日)

なびげーたー

ミレニアム・プロジェクトと産業競争力

産業本部長 永松恵一


経団連が産業競争力会議に提案した情報化、高齢化、環境対応の産官学共同プロジェクトは、ミレニアム・プロジェクトとして概算要求特別枠が認められ、これからの具体化作業に期待が寄せられている。

「20世紀の予言」(報知新聞:1901年1月2日、3日)がいろいろな機会に話題になっている。このなかで、「形而下においては『蒸気力時代』『電気力時代』の称があり、また形而上においては『人道時代』『婦人時代』の名あることなるが、・・・・・世界列強の変動はまずさしおきて、しばらく物質上の進歩につきて想像するに」としたうえで、11項目におよぶ予言を行なっている。「人と獣との会話自在」や「幼稚園廃止」など、未だ実現していない夢もあるが、「遠距離の写真」「空中軍艦空中砲台」「7日間世界一周」などは、誠にあざやかな予言としかいいようがない。

21世紀を考える時、少子高齢化はやや日本の特殊要因ではあるが、これと環境・エネルギー、情報化の3つがキーワードであることは間違いない。これらの問題や課題を解決していくには、制度的・社会的枠組みや意識の改革などさまざまな取組みが必要であるが、何といっても技術進歩によるところが大きい。科学技術庁が2年前に実施した技術予測調査は2025年までとなっているが、それでも高効率電池の開発(2010年)、癌の転移機構の解明(2012年)、太陽光発電所の建設(2020年)など多くの夢のある予測が含まれている。

産業競争力会議で総理が約束したミレニアム・プロジェクトは、来年度概算要求の特別枠として認められ、経団連が提唱した情報化、高齢化、環境対応の官産学共同プロジェクトを一つの軸にして、目下、具体的作業が本格的に進められつつある。これらのプロジェクトは長々期プロジェクトではなく、数年後に具体的成果が見られるものを対象としているが、新しいミレニアム、そして21世紀の幕開けにふさわしい成果があがることを期待している。

今日、アメリカ産業の復活が世界の注目を集めているが、1970年代はエネルギー危機、1980年代は競争力の危機に見舞われていた。アメリカの競争力強化戦略として1985年のヤング・レポートがつとに有名であるが、1980年に制定されたバイド−ル法により国有特許が民間・大学に開放された効果の大きさを評価する向きも多い。また規制緩和、大幅な減税なども実施され、90年代に入ってからは国防省の研究成果からインターネットが派生してきた。アメリカ人気質の独立指向・チャレンジ精神も加わって、ベンチャーが民間、大学から続々と誕生してきた。国防・宇宙分野を中心とする政府調達の推進も、産業技術力の強化に大きく貢献している。

わが国においても予算の重点化、産官学の連携プレー、チャレンジ精神の発揮など、総合的な取組みが強く求められる。


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