経団連くりっぷ No.107 (1999年8月12日)

経団連意見書/7月27日

「電子商取引の推進に関する提言」を建議


情報通信委員会(委員長 藤井義弘氏)では、「電子商取引の推進に関する提言」をとりまとめ、7月27日の理事会を経て、政府・与党関係方面に建議した。
以下は提言の概要である。

電子商取引とは:政府、企業、消費者それぞれがコンピュータネット・ワークを活用してモノ、カネ、情報をシームレスにやり取りすることにより、経済活動を行なっていくこと。

基本的な考え方

−電子商取引は、わが国が活力を取り戻すためのツールである−

【電子商取引推進の基本的考え方】

政府、企業が電子商取引を推進するに当たっては、以下の基本的考え方を踏まえる必要がある。

(1)企業の自主的取組みと技術革新の成果の活用
(2)電子政府の実現
(3)政府による戦略的・集中的な環境整備

  1. 企業の自主的取組みと技術革新の成果の活用
    1. 経営者のリーダーシップの発揮
      電子商取引を推進するには、これまでの事業運営を革新することが不可欠であり、経営者自身が電子商取引の意義と効果を正しく認識し、リーダーシップを発揮して、トップダウンによって推進すべき。

    2. 新たなビジネスに挑戦しやすい環境づくり
      大企業、ベンチャー企業がともに新たなビジネスに挑戦しやすい環境を整備すべき。具体的には、人材の育成・活用、機動的な経営システムへの変革と、挑戦を評価できる風土改革・意識改革が必要。

    3. 既存の枠組みを越えた企業間電子商取引の推進
      今後は、インターネット等のオープンなネットワークを活用することにより、既存のグループや業界の枠組みを越えた企業間電子商取引の推進が必要。中小企業をはじめとする利用者のコストや利便性を重視し、グループや業界の枠組みを越えた標準化や相互運用性向上のための取組みを加速すべき。

    4. グローバルな電子商取引の枠組みづくりへの参画
      民間企業がグローバルな電子商取引の枠組みづくりに積極的に参画し、主導的な役割を果たすべき。

  2. 電子政府の実現
  3. 政府や地方公共団体も重要な電子商取引の主体であり、簡素で効率的な政府を実現するため、率先して政府自ら電子商取引(公共調達や歳入・歳出事務、行政手続の電子化等)に取り組むべき。

  4. 政府による戦略的・集中的な環境整備〜プログラムの策定と実施〜
  5. 民間分野の電子商取引の推進は基本的には企業の自主的取組みに委ねるべきであり、政府は企業が創意工夫を活かして自由なビジネスを展開できるような環境整備を行なうべき。そのため、向こう2年間に電子商取引普及のために効果の高い施策を省庁横断的かつ集中的に実施するためのプログラムを策定すべき。

[電子商取引促進プログラムの概要]

特色:向こう2年間で、効果が目にみえる課題に優先的に取り組む。
優先課題具体的施策
1.多様で低廉な通信サービスの実現 ・情報通信法制の見直し(電気通信事業法等)
・回線設備整備に関する環境整備
2.情報リテラシーの向上 ・2000年3月までに教育情報化の基本戦略(情報リテラシー憲章)の策定
・世界最高レベルの教育情報化の実現
3.電子認証に関する制度的課題への対応 ・電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用する基盤づくりに向けての課題の官民協調による解決
・電子政府実現に向けた電子認証制度の確立
4.個人情報の適切な取扱いの確保 ・民間の自主的取組みや技術的対応を補完するセーフティネットの整備(必要最小限の法的枠組み、救済体制の整備、消費者教育)
5.電子商取引に対応した諸制度の見直し ・書面や対面によることを前提とした各種業法等の見直し(旅行業法、訪問販売法、証券取引法等)
・サービス面、価格面の競争促進に向けた規制改革の促進(酒類販売業の需給調整要件廃止の早期繰上げ、書籍等の再販制度の見直し等)
・契約ルールの明確化
6.雇用の円滑なシフトの支援 ・人材育成、職種転換のための教育/訓練制度の充実等
7.官民挙げての国際的枠組みづくりへの参画 ・OECD、WTO、国連等への積極的発言
・官民の意見/情報交換の場の設置


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