経団連くりっぷ No.107 (1999年8月12日)

1999年度日本ミャンマー経済委員会 総会(委員長 鳥海 巖氏)/7月6日

課題の多いミャンマー経済


日本ミャンマー経済委員会では、99年度総会を開催し、98年度事業報告・収支決算、並びに99年度事業計画・収支予算を審議し、承認した。当日は、埼玉大学大学院政策科学研究科の西野文雄教授より、大蔵省財政金融研究所のミャンマー懇談会(座長 西野教授)がまとめた報告書の概要と、6月にヤンゴンで開催された同報告書に関するワークショップについて説明をきくとともに懇談した。

西野教授説明要旨

  1. 財政・金融
  2. 1997年度の歳入は対GDP比6.8%であり、減少傾向にある。そのため、歳出は厳しく抑制されている。国家財政全体の赤字は対GDP比6〜7%である。その大部分は政府短期証券(TB)を中央銀行が直接引受け紙幣を増刷することで補填している。その結果、20〜30%のインフレが生じており、通貨価値の低下を招いている。この背景には、中央銀行が財政歳入省の一部となっているため、TB引受けを事実上拒否できないとの事情がある。中央銀行の独立性を確保する必要がある点を日本側から指摘した。さらに、地租や輸出税などの形で農業部門への課税強化を検討すべきとも伝えた。
    ミャンマーの資本市場は未整備であり、現在は銀行が金融の中心的な役割を果たしている。銀行預金残高は89年以降順調に増加しているが、現在のところ実質金利はマイナスであり、このままでは中長期的な貯蓄動員に限界がある。

  3. 為替制度
  4. 公定レートと実勢レートの乖離は50〜60倍と極めて大きい。この二重為替の問題は外資導入の大きな障害であり、早急な統一が難しいのであれば、一本化の道筋をはっきり国内外に示すべきと日本側から意見を述べた。

  5. 産業
  6. 今後とも農業が産業の中心であるが、その発展のためには、土地の民有化、開墾の推進、品種改良などが必要である。
    製造業については、当面の外資導入策として経済特区を設立することが考えられる。このほか、二重為替、電力などのインフラ未整備やマクロ経済の不安定さなどの問題を解消することが産業育成のためにも重要である。

  7. まとめ
  8. ミャンマー政府は、今後、市場信任の獲得、産業発展を担う人材の育成、ならびに社会問題(環境、麻薬、貧困など)の解決に注力する必要がある。また、国際社会が対ミャンマー援助を再開する際は、ベーシック・ヒューマン・ニーズ分野での支援や地域・地球規模の問題(メコン河流域諸国の環境問題、麻薬撲滅など)を解決するための支援などから始めることが適当と考える。


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