経団連くりっぷ No.107 (1999年8月12日)

1999年度日本イラン経済委員会 総会(委員長 相川賢太郎氏)7月16日

改革の動向と債務問題が注目されるイラン情勢


日本イラン経済委員会は、99年度定時総会を開催し、98年度事業報告および収支決算ならび99年度事業計画および事業予算を審議し、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち通産省貿易局の加藤文彦貿易保険課長より、最近のイラン情勢とわが国の対イラン中長期貿易保険の検討状況について説明を受けた。

加藤課長発言要旨

  1. イランの対外関係
  2. 懸案の対米関係は、本年に入って改善しつつあり、米国が食糧および医薬品の輸出に対する制裁を一部解除している。今後も保守派の動向次第で揺り戻しはあろうが、よい方向に向かっていることは間違いない。
    欧州との関係では、本年4月にはハタミ大統領がイタリアを訪問するなど好転の兆しをみせ、欧州各国の貿易保険当局は、中長期貿易保険の引受を再開している。
    中東の近隣諸国との関係も緊密化している。先般もハタミ大統領のサウジ訪問が実現、ファハド国王が病身ながら空港に出迎えたことが確認されており、注目に値する。

  3. イランの経済情勢
  4. イラン経済は、GDPの70〜80%を石油輸出に依存している。97年11月にバレルあたり18ドルだった油価は、98年末には10ドルを切った。油価が1ドル変動すると、イランの国庫収入は9億ドル上下する。昨年来油価が低迷した結果、本年3月に終了したイランの98会計年度において、約30億ドルの歳入不足が生じた。緊急対策として、イラン政府は、日独伊の3国に各々10億ドルの融資を申し込み、日本は既存債権の返済繰り延べを通じて約5億ドル、独伊は各々約7億ドルの融資に応じた。
    99会計年度には、現在、油価がバレルあたり約16ドルまで上昇していることにより、約50億ドルの歳入増が見込まれるが、98会計年度の借入により債務返済が増加するため、支出も約70億ドル増加し、返済のピークを迎える。これをいかに乗り切るかが現在の課題である。再来年以降は、返済額が減少するので、山場は来年3月であろう。頼みとする油価は、アジア経済の回復とOPEC協調減産により上昇してはいるが、予断は許さない。

  5. 貿易保険の検討状況
  6. イラン向けの貿易保険については、現在、短期の貿易保険は引き受ている。ただ昨年12月には、短期の通常貿易に対する返済が一時的にストップし、現在も約20億円ほどの返済遅延がでている。保険当局として頭のいたいところである。
    独ヘルメスをはじめ欧州の貿易保険当局は、規模の小さな中長期保険を再開している。わが国の中長期の貿易保険の引受は、出遅れたくはないがイラン側の支払能力次第であり、慎重に検討を進めている。


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