経団連くりっぷ No.107 (1999年8月12日)

1999年度日本ベトナム経済委員会 総会(委員長 宮原賢次氏)/7月27日

ベトナムの市場経済化に向けて


日本ベトナム経済委員会では、99年度定時総会を開催し、98年度事業報告、収支決算および99年度事業計画、収支予算につき審議、承認した。
また、当日は石川滋一橋大学名誉教授より、現在外務省・国際協力事業団(JICA)によって推進されている「ベトナム市場経済化支援プログラム」について説明をきいた。

石川名誉教授説明要旨

  1. はじめに
  2. ベトナムでは1986年に市場経済化政策(ドイモイ政策)が始まった。しかし当時はまだベトナム戦争後の復興期であり、長期経済計画を立案するための基盤が脆弱であった。90年代半ばになって経済基盤が確立してきたこともあり、96年の第8回党大会において採択された第6次5ヶ年計画の成功が今後のベトナムの経済成長にとって重要な意味合いを持つ。この第6次5ヶ年計画の草案作成へのアドバイスという形で「ベトナム市場経済化支援プログラム」は開始された。同プログラムはODAの技術協力スキームに基いて行なわれる知的支援の一環である。

  3. プログラムの概要
  4. 第6次5ヶ年計画の草案作成へのアドバイス(第1フェーズ)に始まった同プログラムは、現在ベトナム経済の現状を踏まえたフォローアップの段階(第2フェーズ)にある。当面の課題は、96年にAFTAに加盟した同国が、国内の幼稚産業を保護しつつ、2006年までに関税を5%以下に引き下げるという公約をどのように実現するかということである。また、「新宮澤構想」に基くベトナムへのわが国資金援助を有効活用するための方策も検討課題となろう。
    なお、プログラムの推進に当っては、世界銀行等の国際機関との協力が不可欠である。現に世界銀行はウォルフェンソン総裁が98年にCDF(Comprehensive Development Framework)を発表し、ベトナムがアジアで唯一のパイロット国に指定されている。

  5. 市場経済化への課題
  6. 80年代のベトナムは、戦争の影響で経済が混乱し(ネットの国内貯蓄はマイナス)、中国・ソ連からの援助に依存しなければ満足な経済計画できないという状況にあった。しかし、援助は漸減し、ついには皆無となった。このような状況のもと、同国は経済計画を放棄し、自由放任主義をとらざる得ず、ドイモイ政策を導入したというのが実状である。このようなベトナムの特殊事情を踏まえた上で、市場経済化支援のシナリオを作成する必要がある。


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