経団連くりっぷ No.108 (1999年9月9日)

経団連訪イスラエル経済ミッション準備会合/8月5日、23日

イスラエルの産業競争力の秘訣を探る


経団連は、9月5〜8日の日程でイスラエルに標記ミッションを派遣したが、出発に先立ち、8月5日と23日にそれぞれ準備会号を開催し、外務省中近東アフリカ局の香川剛広 中近東第1課長と在日イスラエル大使館のエラッド公使から、それぞれブリーフィングを受けた。

香川課長説明要旨

  1. イスラエルは第2次大戦終了後に誕生した新しい国である。2000年におよぶ離散の後、建国された国であるだけに、国民は世界各地から集まり、さまざまな社会背景をもっている。したがって、数次におよぶ中東戦争を勝ち抜いた後、今や中東最大の経済力をほこる国家に成長したが、国内の利害対立も目立つ。

  2. 本年7月に誕生したバラク政権は、中東和平を積極的に推進するとみられている。この点は国民の70%が和平推進を支持していることからも裏付けられている。

  3. わが国にとっては、中東和平の達成が、地域の安定にとどまらず、経済的な安全保障の確保にもつながる。近年イスラエルでは、ハイテク産業の成長が著しく、わが国産業競争力の再生のための最良のパートナーになりうる国であると確信している。

エラッド公使発言要旨

  1. 昨年建国50周年を迎えたイスラエルであるが、建国当初の伝統的な産業は、いわゆるローテク産業であった。その改革を企図し、政府は、20年の長期計画をたて、国内産業競争力の強化に取り組んだ。具体的な施策としては、緩やかだが不可逆的な国内市場の開放と自由貿易協定の促進、そして外資導入のための法制度整備である。今やイスラエルは、NAFTA、EUをはじめとする先進国のほとんどと自由貿易協定を締結しており、輸出入とも関税がかからない。また先進的な投資誘致政策をとった結果、欧米のほとんどの先端企業がイスラエルに投資している。

  2. 産業のハイテク化が進行することにより人手不足が深刻になったが、旧ソ連から学歴の高い100万人規模の移民が流入したことにより問題は改善した。今やイスラエルの輸出はGDPの約50%を占めるが、そのほとんどはハイテク分野の輸出である。

  3. イスラエルがハイテク産業育成に成功した要因は、常にベンチャー企業が3,000社程度存在していることと、それらを支援するためのベンチャーキャピタルが存在するためである。イスラエル政府は、ベンチャーキャピタル支援のために、資金の80%を保証している。

  4. 昨今、イスラエル企業を外国企業が高額で買収する傾向がある。日本企業は、新しい技術を製品化するという観点からは世界一である。ますますイスラエル企業を買収し、ビジネスを拡大してもらいたい。


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