経団連くりっぷ No.109 (1999年9月22日)

なびげーたー

国際ルールづくりに民間企業の参画が求められている

常務理事 藤原勝博


  1. 経済のグローバル化はもう止められない。それに伴い国際競争も激しくなる。加えて情報技術の進展が、この傾向に拍車をかけている。
    一方、各国は、国内の政治につき動かされ、自国の利益を守るべく、時には貿易・投資自由化を主張し、時には国内産業の保護、育成を唱える。そこで、経済をめぐる国際紛争が起こり、世界のマスコミをにぎわしている。

  2. 経済グローバル化のもとで競争をしていくには、ルールの調和がどうしても必要である。いつかは、世界経済はわかりやすい共通ルールのもとで運営される。それを目指して、今、世界各国は努力をしている過程といえよう。
    もうすっかり忘れている人もいようが、1994年のAPEC18カ国・地域の首脳は、インドネシアのボゴールに会して、全加盟国・地域は2020年までに貿易・投資の自由化をすると宣言した。そのうち日、米などの「先進国」は2010年までと元気よく打ち上げた。あと10年そこそこである。
    またWTOの新ラウンドは、今年11月から実質スタートして、3年位の間に、農業、サービス産業などの既定の課題をはじめ、さまざまな問題を取り上げる。

  3. このように、経済活動をめぐる国際ルール作りは今後、ますます忙しい仕事になる。米国の基準にすべてを合わせるわけにもいかない。日本は、G−7のメンバーでもあり、同時にアジア、ASEAN各国からも経済分野では大きな期待をかけられている。
    われわれ日本人は国際ルールづくりといえば、大昔からお上の仕事、政府の仕事と官民共に信じてきた。しかし、最近はどうも様子が変わってきた。まず、国際ルールづくりの中心にいる米、欧では、国際的なルールが自らのビジネスに有利なものとなるよう、民間経済界が政府間交渉に積極的に関与し、時には交渉をリードすることも辞さない勢いである。欧米間では、TABD(環太平洋ビジネスダイアローグ)など大西洋をはさんだ民間ベースの話合いが先行し、官が後追いをするという傾向が見られる。
    APECでも「APEC means Business」というスローガンのもと、首脳会議に民間の経済界の代表から意見具申をするABAC(APECビジネス諮問委員会)の役割が強調されている。米国は、民間ベースのABACを政府ベースのAPECの前哨戦として利用し、次にAPECをWTO交渉の前哨戦に利用しようという動きを見せている。

  4. このような状況のもと、日本の民間経済界も国際ルールづくりに積極的に参加していかなければ損をする。英語が下手でも議論に参加しなくてはならない。9月12日からニュージーランドでAPEC閣僚、首脳会議がある。同時期に民間のABAC総会があり、日本からも3人の代表が参加する。この3人のABAC代表の活動をオール経済界で支援するため、ABAC日本支援協議会ができ上がりつつある。グローバルに活躍する日本の一流企業の積極的参加が求められている。


くりっぷ No.109 目次日本語のホームページ