経団連くりっぷ No.109 (1999年9月22日)

「日中植林協力フォーラム」第1回シンポジウム /9月6日

日中植林協力アピールを採択


江沢民国家主席との2回にわたる会談で今井会長が提案した環境・緑化協力を21世紀の日中協力の柱の一つに発展させるため、中国の植林事業に従事あるいは関心を持つ関係者で日中植林協力のあり方を議論する「日中植林協力フォーラム」の活動が、標記の第1回シンポジウムを嚆矢としてスタートした。シンポジウムには、北は北海道から南は鹿児島までの400名を超える参加者が詰め掛けた。

  1. 開会〜基調講演
  2. 大國昌彦中国委員会植林協力部会長による総合司会のもと、今井会長の開会挨拶を皮切りに、真鍋賢二環境庁長官をはじめ5名の来賓が演壇に立った。その後、日本林学会の箕輪光博会長(東京大学教授)と中国国家林業局国際合作司の曲桂林司長が基調講演を行なった。
    箕輪会長は「地球環境から見た中国における植林」をテーマに、植林の持つ社会的意義は、エゴ(見えるもの=経済)とエコ(見えないもの=環境)の橋渡しにあるとの発表があった。曲司長は「中国の林業と植林の問題」をテーマに、中国の林業政策に携わる立場から、中国の森林が現在抱えている問題点と中国の国家政策として進めている生態環境建設について発表した。

  3. 現場報告 I
  4. 吉川賢岡山大学教授のコーディネートのもと、中国の現場で実際植林事業に従事されている方々による現場報告が行なわれた。
    現場報告 Iでは、黄土高原緑化と砂漠化防止を実際に手掛けているNGOの代表から、体験談を交えた報告があった。
    中国山西省から駆けつけた大同市青年連合会の祁学峰主席と緑の地球ネットワークの高見邦雄事務局長からは、黄土高原における厳しい生態環境と失敗を繰り返しながらも前進させている植林事業の実態について説明があった。日本沙漠緑化実践協会の遠山正瑛会長と沙漠植林ボランティア協会の菊地豊会長からは、内蒙古における植林の状況と今後の展望について報告があった。

  5. 現場報告 II
  6. 現場報告第II部では「日中交流で取り組む生態環境建設」というテーマの下、学問的知見に基づいた植林をどのように実施していくか、各団体の活動報告をきいた。
    国際生態学センターの宮脇昭所長からは「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」の取組みについて、スライドで紹介しながら説明があった。グリーンハット基金の遠山柾雄会長は、樹種の選定と地域住民の意見を尊重することが大事であるとの発表があった。最後に経団連の大國部会長からは、経団連が現在検討を進めているモデル植林の構想について報告があった。

  7. アピール
  8. 最後に、下記の「日中植林協力アピール」を採択し、シンポジウムは閉幕した。


日中植林協力アピール

日中植林協力フォーラム
1999年9月6日

本日、日中両国政府の関係要路の方の参加を得て、日本の経済界、学会、NGO、地方自治体等中国の植林に従事し、関心を持つ関係者は、日中植林協力のあり方を議論する場として日中植林協力フォーラムをスタートさせた。
中国では砂漠化、土壌浸食、異常渇水、洪水などの被害が年を追うごとに深刻化しているが、その根底にはさまざまな原因に基づく森林の消失があり、中国国内でも森林を取り戻すための関係者の努力が活発化している。日本の私たちが隣国である中国の緑化に協力することは、地球環境ひいては日本の環境を維持するためにも意義あることである。環境のための協力は20世紀の不幸な歴史を踏み越えて、21世紀の日中関係をより実り豊かなものにするに違いない。
こうした問題意識を持って、私たちは次のとおりシンポジウムの成果を総括し、日中両国一人ひとりの市民に向かってアピールする。

  • 森林の再生には長い時間がかかる。私たちの協力も長期に持続する必要がある。
  • 植えられた木はそこに住み、生活する人たちに育まれて初めて森になる。そのためには地元の人の支持を得て、その積極性を引き出すことが何よりも重要である。
  • 中国における植林の経験や教訓をお互いに交流し、さらに日中両国の多くの人々が共通の認識を持つ必要がある。
  • 現地に根を下ろして植林活動を行っているNGO、自治体等の活動を支援する「小渕基金」のの創設は、今までのODAには見られない画期的な試みであり、心から歓迎する。
  • 科学的知見と現場の経験との結合が必要である。自然科学、社会科学など、多くの学問分野のの協力を得て、日中の協力により、新しい知識と経験を総括し、その成果を公表し、共有と活活用を図るべきである。
  • 植林は地球温暖化を防ぐためにも重要である。1997年12月の温暖化防止京都会議で、クリーンン開発メカニズム(CDM)が議定書に盛り込まれた。その目的は発展途上国の持続的発展をを支援するとともに、先進各国の排出削減目標の批准を促進することにある。CDMが成立しし、林業プロジェクトが実施できるようになれば、日中植林協力は新たなチャンスを得ることとになろう。

語るだけで満足してはならない。実行なくして中国の緑化は実現しない。私たちは21世紀の100年間を視野に入れて日中協力を進める。緑の架け橋をより強固にして22世紀を迎えられるよう、がんばりたい。


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