多国籍企業ガイドラインに関する懇談会(座長 根上卓也氏)/9月7日
OECDでは、多国籍企業の進出先国における行動のあり方を示した多国籍企業ガイドライン(以下「ガイドライン」)の大幅な改訂作業を本年6月より開始した。今回の改訂は、わが国企業の海外事業活動に大きな影響をおよぼす可能性がある。そこでOECD諮問委員会の下に「多国籍企業ガイドラインに関する懇談会」を新設し、OECDでの検討状況をフォローするとともに、交渉に合わせて適宜意見を提出していくこととなった。第1回会合では、通産省国際企業課の中園雅巳課長補佐より、最近の検討状況について説明をきいた。
ガイドラインの実施は各企業の自主性に委ねられているが、1976年の公表以来、多国籍企業によって十分積極的に活用されてこなかった。そこで今回の見直しを機に、実施面での強化を図ろうとする動きがある。
法的拘束力
一部の国はガイドラインに法的拘束力を持たせることを提案しているが、大半は支持していない。
NCPの強化
OECD理事会決定により、加盟国はガイドラインの普及、実施の監視のために、ナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)の設置を義務づけられているが、実際に機能しているとは言い難い。そこでNCPの機能強化を重視している国が多い。
企業名の公表
一部の国が提案しているガイドライン違反企業名の公表には否定的な意見が強い。むしろ優良企業名の公表をガイドライン遵守のインセンティブとすべきとの意見が出ている。
NGOの参加
NGOの政治力が強まり、ガイドラインの運用上、無視できなくなっている。アドホックに意見聴取の機会を設ける等の対応が必要になると思われる。
前回の見直し(91年)以降のさまざまな国際条約・取極め等の内容を反映させるべく、規定の見直しが進められている。
環境
リオ宣言、アジェンダ21などを踏まえて、環境アセスメント等につき従来より踏み込んだ内容の改訂案が示されているが、他方で企業に過大な負担を課すべきでないとの意見もある。
競争
ハードコア・カルテルに関するOECD勧告の内容を踏まえ、若干の修正が提案されている。
情報公開
OECDコーポレート・ガバナンス原則の内容を反映させるべく、修正が検討されている。
雇用・労使関係
ILOのコア労働基準に含まれる児童労働・強制労働の禁止を追加することが提案されている。
消費者保護
電子商取引の消費者保護に関するOECDガイドライン等も踏まえ、新たに独立の章を設けることが検討されている。
贈賄
OECD贈賄条約、税控除等に関するOECD勧告を踏まえ、新たに独立の章を設けることが検討されている。