経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

なびげーたー

都市の再生に向けて遊休地の積極的活用を

産業本部副本部長 林 正


都市における集積は、効率的な経済活動の基盤であり、人々が多様な交流を通じて活力と創造力を生み出す源泉でもある。こうした観点から新しい時代に求められる都市機能を遊休地を活用して戦略的に整備し、都市型社会にふさわしい快適で安全な都市への再生を図ることがわが国の国際競争力を高め、日本経済の再生にもつながる。

経済のグローバル化、情報化、少子・高齢化、環境の保全といった21世紀の課題に対応した形で、都市を安心して暮らせる場として、活力ある経済活動が行なわれる場として再構築しなければならない。このためには、バブル崩壊後に生じた既成市街地の虫食い土地、産業の再編に伴う工場跡地などを都市の再生と産業の再生に向けて、そして生活環境の改善に向けて有効に活用することが求められる。

例えば、既成市街地にある遊休地を種地とし、周辺地域を「都市再生戦略地域」として指定し、公共の福祉の観点から私権を制限し、官民の連携のもとに集中的な投資を行ない21世紀に求められる都市機能を整備していくことが求められる。特に防災の観点は重要であり、遊休地や木造密集地区をターゲットゾーンとして指定し、整備目標年限を設定して災害に強い都市へと大胆に改造していくことが必要である。

また、東京湾の臨海部では工場跡地や利用転換が想定されている遊休地が3,000haもあるとの試算もあり、地権者が少なくまとまった規模の土地を確保できる臨海部を、21世紀の都市に求められる施設を建設する場所として、その有効活用を検討すべきである。例えば、環境保全の観点からダイオキシンを出さない廃棄物処理施設や家電、自動車、建設廃材などのリサイクル施設を建設し、世界のごみ処理・リサイクルモデル基地として整備することもできる。また、少子・高齢化に対応した保育施設や老人福祉施設の建設、さらには災害時の防災拠点としての整備と併せて、市民の憩いの場となる親水空間としての活用も考えられる。

もちろん土地活用については、保有企業がその責任として有効利用をするのは当然であるが、上述したようなプロジェクトは私企業の能力を超えたものであり、国・地方公共団体の積極的関与とともに、土地活用や基盤整備のノウハウを持ち、さまざまな出資機能や用地の先行取得機能を備えた都市基盤整備公団や民間都市開発推進機構など公的機関の積極的な支援が求められる。

また、民間活力の活用という観点からPFIやSPC(特定目的会社)などによるプロジェクトファイナンスの導入等、民間の創意工夫を発揮させる方策も視野に入れる必要があろう。


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