第32回東北地方経済懇談会/9月29日
「産業競争力の強化と活力ある東北の創造」をテーマとして、経団連・東北経済連合会(東経連)共催の標記懇談会が仙台市において開催された。経団連側は今井会長、古川・辻・金井・鈴木の各副会長が出席し、東経連首脳と意見交換を行なった。また、懇談会に先立ち東北大学金属材料研究所を訪問し、新素材等の研究開発施設の視察を行なった。
全国的に景況感が好転しているが、景気回復を確実なものとするため、第二次補正予算の編成等の経済対策に期待している。
東北地域においては、産学官一体となり、地域開発の戦略的構想である東北インテリジェント・コスモス構想、ならびに企業活動を広域的に支援する東北ベンチャーランド運動を推進しており、独自の技術力を持つ企業の創出により、地域における産業競争力の強化を図っていきたいと考えている。
本年3月、閣議決定された第5次東北開発促進計画において、東北は「21世紀のわが国における多軸型国土構造の形成を先導する自然共生型社会のフロンティア」としての役割を期待されており、東北を真に活力ある「21世紀のフロントランナー」として導くことが東経連の大きな責務である。
東北ベンチャーランド運動の推進主体として設立された東北ベンチャーランド協議会においては、昨年度より、会員企業同士の共同事業化等を促進するため、プロジェクト方式による共同化促進事業を実施、企業間リンケージが構築されている。
東北インテリジェンス・コスモス構想については、学術・研究開発機能の集積とその成果の産業化を最大の課題として、研究開発会社を東北7県に14社設立し、独創的な研究活動を進めている。
さらに、東北地域においては、2002年ワールドカップサッカー大会をはじめ、21世紀初頭に国際スポーツイベントが目白押しであり、外国人観光客の誘致促進をテーマに、新しい観光への取組みを展開している。
東北では、国際コンテナ輸送等の国際物流の多くが東京圏経由であり、こうした物流の非効率および高コスト構造が東北の産業競争力を弱める要因となっているため、広域連携を通じてインフラを整備したり、物流関連社会資本を充実させる必要がある。
また、東北の情報通信基盤の整備について見ると、その整備状況は他地域に比して低く、特に加入者系ケーブルの光ファイバ化の促進が東北の大きな課題である。
こうした国際物流や情報通信基盤に関わる社会資本整備に当たっては広域連携が重要であり、東北が一つとなり海外との交流や情報発信に取り組まなければならない。
東北7県のCO2排出量は全国排出量の9.5%であるが、90年代における排出量増加率は全国の約2倍であり、民生および運輸部門のCO2排出量増加が主因である。
そのため、東経連では、省エネ機器・建築物の普及や運輸物流部門効率化に向けた提言を行ない、産官連携の下、その具体的推進を図っている。
ISO14001認証取得についても積極的に取り組んでおり、例えば、認証取得を目指して審査中である仙台市は、政令指定都市として初めての取得が見込まれている。
また、冷熱源としての貯雪槽利用など、東北地域の自然条件を生かした新エネルギーの実用化が全国的にも注目されており、今後、環境共生の分野として有望である。
中央省庁改革法および地方分権推進法が成立したとはいえ、地方分権を裏付ける財源移譲については大きな前進は見られず、今後、国への過度の依存体質から脱却し、地方の自主財源確保や財政効率化にインセンティブが図れる地方交付税制度へと改革していかなければならない。
自治体については、市町村合併による規模の適正化、行政コストの削減、効率的な行政システムへの改革等が求められる。
地方の過疎化が深刻になる中、将来に対する不安を払拭するためには、国政全般の構造改革を断行しなければならず、首都機能移転はまさに改革促進の起爆剤となる。
東経連では、21世紀の東北の自立発展戦略として、来年の5月を目途に、現在「東経連21世紀ビジョン」を策定するための作業を行なっており、策定に当たって、
金井副会長から産業競争力の強化に向けた取組み、鈴木副会長から規制緩和の推進、また、辻副会長から最近の環境問題に関して、それぞれ説明があった後、古川副会長より東北地方の活性化と国土構造の再編に向けた戦略の推進について発言がなされた。
最後に今井会長より、東北側の取組みに対して経団連は可能な限り応援を続けていくとして、締め括った。