経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

輸送委員会 企画部会(部会長 横山善太氏)/9月8日

21世紀における港湾の整備・管理のあり方について


政府の港湾審議会管理部会は、7月30日、「経済・社会の変化に対応した港湾の整備・管理のあり方について」と題する中間報告を取りまとめ、広く国民から意見照会を行なった上で、年内を目途に最終答申として取りまとめる予定である。そこで、運輸省港湾局計画課の鬼頭平三課長および山根隆行企画調査室長を招き、同中間報告について説明をきくとともに、意見交換を行なった。併せて、今年度の運輸分野における規制緩和要望案についても審議を行なった。

  1. 運輸省側説明要旨
    1. わが国経済・社会の変化と港湾
    2. わが国にとって重要な社会資本の一つである港湾の今後の整備・管理のあり方を考える際、経済的効率性の向上のみならず、人間活動と自然環境との調和を含めた質的向上が求められる時代となってきている現状を踏まえ、港湾行政を展開していく必要がある。
      具体的には、

      1. グローバル化に対応した国土構造の形成、
      2. 国際競争力を備えた活力ある経済・社会の構築、
      3. 恵み豊かな自然環境の享受と継承、
      4. 創意と工夫による自立した地域づくりの促進、
      5. 暮らしの安心と国土の安全の確保、
      等に貢献していくことが求められてくる。

    3. 21世紀の港湾のあり方と課題
    4. わが国では、外国貿易量の99.8%が港湾を経由するなど、国民生活や経済・社会活動に不可欠な物資輸送の大半を海上輸送に依存している。
      21世紀においては、地方の主体性に重きを置く港湾法の精神を尊重しつつ、国、各港湾管理者、利用者等が適切な役割分担の下で協力・連携を図り、経済・社会の発展に貢献し得るよう港湾の整備・管理に取り組んでいくことが求められる。

      1. 海陸を結ぶ輸送拠点としての役割
        港湾は、国際競争力を備えた国際海上コンテナ輸送、産業競争力等を支える国際物流、国土の骨格を形成する国内輸送網等、さまざまな拠点としての役割を果たしている。
        今後、国際競争ならびに港湾間競争の激化の下で重点投資を行うとともに、外貿コンテナ貨物量の増加など輸送形態の進展に伴って広域的な調整を図る必要がある。
        また、物流コスト削減要請や海運の構造変化等に対応することも重要である。

      2. 個性ある地域づくりに資する空間
        港湾は、人と自然に優しい臨海部空間、多様な産業導入の空間等の役割も果たしている。港湾の整備・管理においては、これまで以上に自立した地域づくりに寄与していく取組みが必要である。
        遊休化している臨海部用地について、物流産業、リサイクル産業の立地等、円滑な土地利用転換を促進するとともに、港湾整備事業の透明性・効率性等の向上に取り組むことが求められている。

      3. 沿岸域の環境保全・創造への貢献
        魚介類等の食料提供、レクリエーションをはじめ、人間の生存にも大きな役割を果たしている沿岸域は同時に、安定的な廃棄物処分の空間を提供しており、今後、環境への負荷軽減や生活環境の改善に継続的に取り組む必要がある。

    5. 港湾行政の進むべき方向
      1. 全国的広域的視点からの取組み強化
        港湾行政は、道路等の社会資本と比較して、地方の自主性を強く尊重した整備・管理体制となっており、地域開発の一環として、国の協力の下、港湾管理者が中心となって進めてきた。
        しかし、わが国の港湾が国際水準の機能を発揮し、国全体として、効率的・効果的な物流体系等を構築するためには、港湾の分類(特定重要港湾、重要港湾、地方港湾)の指定の見直し、港湾整備における国の財政負担率の見直しなど、国と地方の役割分担を明確にしつつ、全国的・広域的な視点からの取組みを強化することが必要である。

      2. 地域の主体的な取組みの支援と強化
        港湾は、地域経済の発展基盤や憩いの場、また、地域のまちづくりの場として、地域にとって重要な役割を果たしている。今後は、多様性に富んだ美しい国土づくりを実現していくために、地域の選択と責任による主体的な取組みを基本とした港湾づくりが従来以上に求められる。
        例えば、港湾計画に関する港湾管理者の裁量の範囲を拡大したり、臨海部の未利用地の円滑な利用転換を図るなど地域の主体的取組みを支援しつつ、港湾の整備・管理システムを強化していくことが必要となる。

      3. 環境の保全・創造のための取組み強化
        港湾においては、環境対策として、これまでも公害防止や生活環境の改善等、時代の要請に応じて取組みを進めてきた。
        今後は、干潟、藻場、海浜の整備や護岸の緩傾斜化、また、廃棄物の発生抑制対策等、自然環境の保全・創造や、循環型経済・社会の構築、地球環境の保全に向けた新たな取組みの強化が求められる。

      4. 港湾行政の透明性、効率性等の向上
        港湾の整備・管理において、港湾行政の透明性や効率性の向上が求められており、港湾事業の実施前後における評価等により、公共事業の決定過程の透明性および評価の適正化を図ることが重要である。
        また、コンテナターミナル等の港湾施設の使用形態には、不特定の船会社がその都度利用する「公共方式」と特定の船会社等に貸し付けられる「公社方式」があるが、今後、両者の適正な役割分担の見直しや、利用効率の向上、利用コストの公平性の確保等の観点から諸施策を検討する必要がある。
        さらに、ハード面においては、1960年代から急速に整備された施設の多くが10年後に、設計上の耐用年数を迎えることから、施設の延命化や計画的な更新を進めていきたいと考えている。

  2. 懇談要旨
  3. 経団連側:
    国際的な大競争時代を迎え、わが国の外国貿易を支える港湾は益々重要となるが、東南アジアの港湾施設に対する比較優位を保つためには、わが国が港湾を最大限有効に活用できるよう、さまざまな規制を撤廃していく必要がある。

    運輸省側:
    規制緩和については、省内で海上交通局とも連携を取りながら、港湾利用者の視点に立った諸施策を検討している。

くりっぷ No.110 目次日本語のホームページ