経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

金融制度委員会(委員長 片田哲也氏)/9月17日

横断的・統一的ルールの下で、新しい金融サービスの実現を


金融制度委員会では、金融審議会部会長代理・第一部会長の蝋山昌一 高岡短期大学長から、金融サービス法のあり方と今後の課題についてきくとともに懇談した。

蝋山学長説明要旨

  1. 金融サービス法の基本的な考え方
  2. 金融審議会第一部会では、21世紀の新しい金融証券制度のあり方について議論しており、7月に「中間整理(第1次)」を公表した。ここで打ち出したいわゆる金融サービス法の基本的な考え方は、わが国の金融に自己責任と市場規律を持ち込むための法律・制度的条件を整備することであり、

    1. 業態を越えた横断的・統一的な取引ルールの制定、
    2. 集団投資スキームという新しい金融の仕組みの創設、
    を強調している。

  3. 金融機能の効率性の向上
  4. 今後わが国金融が再生するためには、安定性の回復だけではなく、機能の回復が必要である。いわゆる金融サービス法をめぐっては、利用者保護や公正さの向上の面のみが強調されがちであるが、金融機能回復のための効率性向上という視点も重要である。

    1. 横断的・統一的なルールの制定
      今後の金融の多様化と変化の速度を考えると、業態ごとに法律・慣行が分断されている現行体系には限界がある。金融商品の販売・勧誘にあたっても、市場での運用にあたっても、従来の縦割りから脱却して、横断的・統一的な取引ルールの下で競争が行なわれるようにしていかなければならない。

    2. 集団投資スキームの創設
      金融の効率性ならびにリスク負担能力が著しく低下している現状を考えると、投資家が自発的にリスクを負担する必要があり、そのための枠組みとして集団投資スキームを位置づけることができる。同スキームは、多数の投資家から資金を集め、金融機関等プロが運用するものであり、業法の枠を超えた横断性と多様性を持つ金融商品を生み出す起爆剤となることが期待される。

  5. ペイオフ解禁ならびに更なる改革の必要性
  6. 今後、市場を効果的に機能させるためにも、ペイオフ解禁を予定通り実施して、金融機関の選別が起こることが必要である。
    また、現在進行中のビッグバンは、縦割りを前提にした競争促進策にとどまっているので、21世紀には、横断的市場整備のための大改革「第2次ビッグバン」が必要である。

  7. 今後の課題
  8. いわゆる金融サービス法制定への道のりは決して易しくない。消費者契約法の議論との絡みがある上、各省にまたがっている監督権限の調整という「省際問題」も難問である。国民に対するリスク教育も必要である。


くりっぷ No.110 目次日本語のホームページ