経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

経済政策委員会 企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/9月13日

雇用のミスマッチ解消に向けた諸課題


経済政策委員会 企画部会では、21世紀初頭に予測される労働力人口の減少の下で、経済社会の活力を維持していく方策について検討を進めている。この一環として、日本労働研究機構の伊藤 実主任研究員から、雇用のミスマッチ解消に向けた諸課題につき、説明をきくとともに、意見交換を行なった。

  1. 伊藤主任研究員説明要旨
    1. 失業の実態とその原因
    2. 約300万人の失業者のうち、再就職の緊要度の高い中高年層は100〜150万人程度とみられる。失業者増加の原因の一つとして、職業能力のミスマッチと年齢・賃金のミスマッチによる再雇用の困難さがある。
      職業能力のミスマッチには、

      1. 専門的な技術・技能の必要なサービス業の求人が多いこと、
      2. 大企業からの失業者にとって、主な求人先である中小企業では大企業に比べ広範な業務遂行能力が求められること、
      3. 求人側の職業能力に関する要求内容が不明確で求職者への情報伝達が不十分であること、
      が挙げられる。年齢と賃金のミスマッチは、年功賃金体系下にあった中高年失業者の希望賃金の高さにより生じている。

    3. 対応策
    4. 能力のミスマッチについては、大企業長期勤続者が、コンピュータ操作技術等欠けている技術の習得に向け自助努力することが必要である。年齢と賃金のミスマッチを解消するには、年功賃金体系を職種別・仕事別賃金体系へと変えていくことが求められる。また、労働者が自らの社会的な評価を正しく把握するための職業・賃金情報の提供が必要である。

    5. 政府の対応
    6. 規制緩和、労働法制の改革は相当進展しており、今後は関連政省令の整備を進めていくことが求められる。また、逼迫する雇用保険特別会計を鑑み、給付制度の対象を、労働者個人と新規雇用側企業に移す等、雇用対策の中身の吟味と、職業能力の強化に向けた余剰金の活用が必要である。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 経団連側:
    終身雇用制はどのように考えるべきか。
    伊藤氏:
    人材育成を外部に依存するのはコストがかかりすぎる。年功賃金体系を修正しつつ、終身雇用制は維持することが現実的である。

    経団連側:
    職業紹介事業のあり方についてどう考えるか。
    伊藤氏:
    結果的に大都市圏では、高度な専門的職業能力を持つ人は民間、それ以外の人は官が職業紹介に当たることになろう。求人数の少ない地方では引き続き官の果たすべき役割は大きい。

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