経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

経済政策委員会 企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/9月21日

設備投資のマクロ的考察とセブン-イレブン・ジャパンの情報化戦略


経済政策委員会 企画部会では、21世紀初頭に予測される労働力人口の減少の下で、経済社会の活力を維持していく方策について検討を進めている。この一環として、日本開発銀行調査部の田中賢治副調査役から設備投資のマクロ的な考察につき、株式会社セブン-イレブン・ジャパンの碓井 誠取締役から情報化戦略につき、説明をきくとともに、意見交換を行なった。

田中副調査役説明要旨

  1. 日本の設備投資の実態と課題
  2. 高水準の設備投資の背景には、高い期待成長率、高い貯蓄率、低い資本コストがあった。今後は高齢化の進行に伴い、労働代替的な設備投資に期待がかかる。しかし、資本の効率性は既に著しく低下しており、高齢化に伴う貯蓄率の低下も懸念され、設備投資を取りまく環境も厳しい。日本経済が活力を維持するためには、収益性の高い投資機会を生み出す必要があり、そのためには積極的な技術開発により、生産性を高め、新規産業を生み出す必要がある。

  3. 米国の情報化投資
  4. 米国では情報化投資が活発だが、マクロデータからは生産性の飛躍的な向上はみられない(生産性パラドックス)。しかし、情報化という新しい技術を生かして、アウトソーシングを担うサービス業が急成長するなど、新しいビジネスが拡大している。
    なお、米国では1980年代のレーガン税制で積極的な設備投資促進策がとられた。しかし、産業間・資産間の不平等や非経済的投資の誘発など問題点が目立ったため、86年に中立性・公平性を重視した税制に見直され、法人税の軽減措置に置き換えられた。

碓井取締役説明要旨

  1. 情報システム構築の狙い
  2. コンビニエンスストア事業では、顧客ニーズの変化に敏感に対応する需要側の対応と、供給側の商流・物流や在庫管理等全工程にわたる効率化の連携が重要である。このため、当社は、需要側ではPOSなどの店舗システムを導入・拡充する一方、供給側では取引先と情報システムを共有化し、共同配送や商品回転率に応じた計画配送を実現してきた。システム投資額の売上高比率は平均0.55%の水準で推移している。

  3. 情報化の効果
  4. スキャナー・ターミナル導入により検品、会計関連コストと物流費を年間115億円セーブし、在庫管理もリアルタイム化している。また、ISDNや衛星を活用したネットワーク構築により、同額のシステム投資額で取扱い情報量を91年から97年の間に600倍に向上させた。こうした情報化戦略により、一店舗当たり在庫高は減少し、平均日販・荒利率は増加してきた。ただし、システムは人間系のコミュニケーションやマネジメントをサポートするものとの位置付を重視している。


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