経団連くりっぷ No.110 (1999年10月14日)

情報通信ワーキング・グループ第1回会合(座長 立花常務理事)/9月21日

情報通信法制は新たな枠組みが必要


情報通信委員会 通信・放送政策部会(部会長:大野 東京三菱銀行専務取締役)では、ユーザー企業からなる情報通信ワーキング・グループ(座長:立花常務理事)を設置し、本年度中を目途に、情報通信法制の具体案を含め、情報通信ビジネス発展のための環境整備のあり方について提言をとりまとめる予定である。第1回会合では、竹内英次郎 ネットリサーチ代表より、情報通信法制の枠組みのあり方について説明をきくとともに懇談した。

竹内ネットリサーチ代表説明要旨

  1. 情報通信法制の問題点
    1. 電気通信事業法は、官庁への許認可・届出手続きを規定した「手続法」に過ぎず、目的観が欠如している。また、事業者は、認可等により完全に政府に掌握されるなど、通信の国家管理主義という考え方が見受けられる。

    2. 電気通信事業法は、独占を原則としていた電気事業法を模倣したこともあって、競争政策が欠如している。競争の思想が明確に盛り込まれておらず、かつては、需給調整条項という競争とは相容れない条項すら設けられていた。重要な問題である相互接続・土地使用に関しても、政府は積極的に問題解決を図るという役割を担うことを放棄している。

    3. 技術的にはインフラ・コンテンツを融合・一体化させたサービス提供が可能となているにもかかわらず、設備(電波法・有線電気通信法)とコンテンツ・運営(放送法・電気通信事業法)に関する法律が切り分けられているなど、融合時代に対応した法制となっていない。

    4. ユニバーサル・サービス確保のためのNTT法と電気通信事業法とが別立てとなっているが、複雑な法体系は避けるべきである。米国と同様に、競争下における社会政策のあり方について、検討すべきである。この他、独立規制機関の欠如などの問題もある。

    5. このように、電気通信事業法をはじめとする日本の情報通信法制には、問題点が多い。情報通信業界における激しい構造変化に対応するためにも、現行の情報通信法制を見直し、新しい法体系・枠組みを構築すべきである。

  2. 「通信法」制定に向けた課題
  3. 事業法に変わる新たな枠組み・新法の検討にあたっては、手段から入るのではなく、目的意識を明確にすることが必要である。例えば、通信をマルチメディア利用のための手段として位置づけて検討することも考えられる。また、新法には、競争政策を導入すべきであり、競争促進に関する主務大臣の義務、NTTの改革意欲を減退させない政策のあり方、さらには社会政策に伴う負担のあり方などについても検討すべきである。


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