経団連くりっぷ No.111 (1999年10月28日)

創造的人材育成協議会(会長 浜田 広氏)/10月1日

21世紀の英語教育

−鈴木孝夫 慶應義塾大学名誉教授にきく


創造的人材育成協議会では、「21世紀の英語教育」について、鈴木慶應大学名誉教授より説明をきくとともに懇談した。また、当日、創造的人材育成協議会を人材育成委員会への改組を決定するとともに、人材育成に関する今後の活動について意見交換した。

  1. 鈴木名誉教授説明要旨
    1. 国家目標の喪失
    2. 日本は、人材でしか大国になれなかった国だが、今その人材が崩壊し始めている。しかし、明確な国家目標がないままに教育を強化しても無意味である。明治時代の日本には、西洋社会に遅れた日本の独立を守るために、富国強兵、追いつき追い越せというはっきりとした国家目標があったが、先頭を追い越した途端に、目標がなくなり、なぜ自分達は働くのかというたががはずれて、人のメルトダウンが生じている。

    3. 「負」の大国である日本
    4. 日本は、国際関係において受け身的に海外に目を向けている「負」の大国であり、主権という意識もなく、マゾ的、ペシミスティックな国である。例えば、オリンピックで日本が勝つと先方は世界ルールを変えてくるが、日本はまた新しいルールの下で努力し、我慢の末に堪忍袋の緒が切れてしまう。小出しで駄目といえば、相手も日本の考えが分かるが、それをしない。主要先進7ヶ国のなかで、日本はいつも端にいる。日本以外は皆インド・ヨーロッパ言語であり、その中で異質扱いされたならば、相手の方が変わるべきだといえるようにならない限り、いくら英語をやっても駄目である。

    5. 英語の上達方法
    6. 英語を話せるようにする立派な方法はない。日本の良さを世界に教えたいということになれば、その中から頭の良い人が手段として英語を活用するようになる。迂遠のようだが、これが英語上達の方法である。

    7. これからの日本の国家目標
    8. 日本の国家目標として、経済超大国ではなく、戦線縮小戦略(リトリート)を考え、弱い者も強い者もそこそこ生きていかれる国を目指すべきである。超大国になるには、日本人はナイーブで練磨度が低すぎる。

  2. 今後の活動について
  3. 今後の活動については、委員より、「世界に通じる日本人」など大きな目標を掲げてはどうか,学校の先生達とのインターフェースを持つことが重要である,英語やコンピュータの問題を掘り下げる,などの指摘があった。
    今井会長からは、「経団連は単なる提言団体ではなく、実現を求められている。人材育成については、企業が求めている人材に関して企業がどう行動し教育に何を求めるか、国として国民としてどういう教育が必要かを見直す(公の意識の欠如、国際人としての教育等)ことが重要である」との発言があった。


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