経団連くりっぷ No.111 (1999年10月28日)

国土・住宅政策委員会 土地・住宅部会(部会長 田中順一郎氏)/10月5日

都市計画制度の再構成に向けて


都市計画中央審議会では基本政策部会計画制度小委員会を設け、経済社会環境の変化に対応して、都市計画制度全般を見直し、再構築することとしている。経団連土地・住宅部会では6月に「都市再生への提言」をとりまとめ、提言の実現方を働きかけてきたが、9月に審議会が報告書「都市計画制度の見直しに当たって」をとりまとめたのを機に、建設省山本繁太郎審議官、加藤利男都市計画課長を招き、報告書の説明をきくとともに、制度改正に向けての課題について意見交換を行なった。

  1. 建設省側説明要旨
    1. 背景説明
      山本審議官
    2. 都市計画法は旧法以来80年、新法になって30年が経過した。新法制定時の課題は、

      1. 新しい憲法秩序、地方自治への対応、
      2. 1960〜70年代の都市への人口集中への対応、
      であった。高度成長が終焉した80年頃にはこれまでの都市計画制度の矛盾が現われ、まちづくりへの動きが高まり、以来、制度改正を繰り返してきている。
      今や都市の再生に向けて、国、地方の力を集中して取り組んで行く必要がある。課題に対して抜本的に取組み、必要な制度的手当てを行ないたい。

    3. 「都市計画制度の見直しに当たって」について
      加藤都市計画課長
    4. 都市計画制度は国民の権利・義務に関わる一番身近な制度のひとつである。そこで、都市計画中央審議会は初めての試みとして、本報告書を建設省のホームページ(http://www.moc.go.jp/city/singikai/sn0900.htm)等を通じて公開し、国民各層の意見を募集している(11月10日まで)。寄せられた意見に基づき年内には答申を得て、次期通常国会に必要な法案を提出したい。

      本報告書では都市計画制度の再構成に当たって、3つの観点から見直すこととしている。すなわち、

      1. 地域の実情に応じて柔軟に活用できる実効性の高いものであること、
      2. 住民にとって分かりやすい仕組みであること、
      3. 中心市街地から郊外部まで質の高い都市空間を提供するため、一律の緩和ではなく、規制を思い切って強化あるいは緩和することにより、全体として調和のある運用をすること、
      である。具体的には、6つの項目の見直しが進められている。

      第1が、都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設である。都市計画区域の指定の方針等を定めるとともに各都市計画区域ごとのマスタープランを策定することを提案した。現行市町村マスタープランについては、現状を維持することとした。
      第2が、都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方の見直しである。現在、都市計画区域外での開発行為は、地方公共団体の条例や開発指導要綱等でしか対応されていない。こうした地域における都市的土地利用を必要最小限、コントロールできる仕組みの創設を提案した。
      第3が、線引き制度および開発許可制度の見直しである。線引き制度は基本的に維持しつつ、三大都市圏の既成市街地などを除いて、都道府県が線引きするかどうかを決定する。また、開発許可の技術的基準は現行通り法令で定めつつ、地方公共団体が条例で安全性等の基準を強化、付加することを可能とすることなどを提案した。
      第4が、既成市街地再整備のための新たな制度づくりである。容積率の割増等が可能となる地域地区にはさまざまなタイプがあるが、これらを整理統合するとともに、多様な建築計画が可能となるよう柔軟な制度を構築することを提案しているほか、地区計画制度についてもより一般化を図る方向で見直すべきであると提案している。
      第5が、環境問題等への対応のための制度の強化である。特に緑地保全等に係る既存の制度を再編整理しながら、自然環境や景観の保全、防災対策などを行なうことや廃棄物処理施設の設置などを広域の観点からマスタープランに位置付ける旨、問題提起している。
      第6が、都市計画の決定システムの合理化である。都市計画の公告縦覧の際にその計画の必要性などを示した資料を付けることを提案している。地区計画については、地域住民や民間事業者などからの策定要請を制度化することとした。

  2. 意見交換(要旨)
  3. 経団連側:
    都道府県ごとにマスタープランをつくると、各県とも大都市のベットタウン化は拒否し、税金のとれる商業施設を求めるということになりかねない。圏域全体での人口動態、インフラ整備の状況などを考え、圏域計画を策定し、それを整合ある形で都市計画に反映させていくべきである。
    建設省側:
    都市計画法制定当初から、圏域計画と都市計画とに有機的関係があるべきだという考え方は強くあったが、現状、それがうまく機能していない面がある。2001年1月には国土交通省が設立され、建設省都市局は国土庁大都市圏整備局、地方振興局の一部と一体となる。一方で、都市計画の認可、調査権限は現在の地方建設局などを母体とする地方整備局に移る。したがって地方整備局でブロック単位での計画をまとめ、都市計画につなげていくことが重要である。

    経団連側:
    地方公共団体は開発指導要綱で住宅付置義務などを課しているが、山手線内、首都圏内でどの程度の住宅が必要かという議論なしに各区単位で住宅付置を義務づけている。また、われわれも分かりやすい制度を求める一方で、柔軟で弾力的な制度を求めている。結局、これら広域的な利害調整を図るための調整理念が不可欠である。
    建設省側:
    一方で、分権を前提にして、市の独自性をどう捉えるかという議論もある。

    経団連側:
    実質的に事業を行なう区域に地区計画を決定する「要請制度」の要件となる「同意を得るべき地域住民」とは誰か。昼間市民も地域住民ではないのか。
    建設省側:
    一方で実質的な利害関係者でない、地権者以外の市民を参画させることには慎重にすべきだとの見方もあり、合意形成の仕方を検討したい。

    経団連側:
    今回の制度見直しは、現実の運用段階で、市町村が制度の意図とは異なった硬直的な運用をする可能性がある。フレキシブルな対応を担保してもらいたい。


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