経団連くりっぷ No.111 (1999年10月28日)

産業技術委員会 バイオテクノロジー部会 (部会長 山野井昭雄氏)/10月13日

バイオ産業の創造に向けた基本戦略


産業技術委員会 バイオテクノロジー部会では、今般、通商産業省基礎産業局生物化学産業課の堅尾和夫課長を招き、バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略と、バイオテクノロジー関連の来年度予算の概算要求の概要等について、説明をきくとともに懇談した。

堅尾課長説明要旨

  1. バイオテクノロジー関連政策の流れ
  2. 本年1月の関係5省庁(科学技術庁、文部省、厚生省、農林水産省、通産省)閣僚の申し合わせである「バイオテクノロジー産業の創造に向けての基本方針」に基づき、7月に共同で「バイオテクノロジー産業の創造に向けての基本戦略」を策定し、今後5年程度を見通して各省庁が連携して取り組むべき具体策をとりまとめ、政府として政策のベクトルを合わせることとした。各省庁はこの基本戦略にのっとり、可能な限り、目標達成年度を定め、予算要求を行なっている。

  3. バイオ関連のミレニアム予算
    1. 関係5省庁連携の下、ミレニアム・プロジェクト(高齢化対応)のなかで、バイオテクノロジー予算として総額約984億円を要求している。
      老人性疾患の克服と健康高齢者の創出を大目標に掲げ、3〜5年後の達成を目標に、

      1. 治療、発病後の対策として、オーダーメイド医療システムの開発、
      2. 予防、発病前の対策として、アレルギーフリー・高機能食品の開発、
      の2つを挙げた。基本アプローチとしては、疾患の要因を遺伝子とタンパク質により解明し、応用をはかりたい。

    2. そのために、第1に、ヒトゲノムの解析として、約335億円を要求している。具体的には、タンパク質の機能解析、ヒトゲノム(完全長cDNA)の構造解析(約73.5億円)に、遺伝子塩基配列の個体差と疾患や薬物反応との関係を解析する(ヒトゲノム多様性解析(222億円))。ヒトゲノム(完全長cDNA)の構造解析は、2年以内に3万個を解析し、ヒトゲノム多様性解析は2年以内に15万ヶ所を特定する。またイネゲノム解析(73億円)は、基本戦略の目標は、2008年までの達成であったが、前倒しする予定である。

    3. 第2は、ヒトゲノム解析の加速化・実用化対策であり、具体的には、情報処理技術を応用したバイオインフォマティクス、ゲノム解析のための生物遺伝資源を供給するバイオリソースセンターの整備、実用化に向けた安全化対策として、安全評価に係る技術の確立と安全性確保を目的としたガイドラインの作成を要求している。

    4. 第3は、ヒトの細胞技術の再生等のオーダーメイド医療・高機能食品の応用開発・市場化支援である。ここは、具体化が遅れた分野であり、今後5年を目途に充実する。


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