国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 阿比留 雄氏)/10月5日
当部会ではこれまで、新しい全国総合開発計画のフォローアップや中心市街地活性化等について検討を重ねてきたが、特色ある地域をつくっていくためには、個々の地域が自らの個性と魅力を認識し、地域情報を対外的に発信していくことが重要である。そこで、東北芸術工科大学の長谷川文雄副学長を招き、地域発信情報が地方活性化に果たす役割について説明をきくとともに懇談した。
地域の活性化に情報がどのように活用され得るかを考える際に、
狭義でいう地域情報化とはすなわち、コンピュータとネットワークの連結であり、今必要なのは地域内にデジタルネットワークを木目細かく張り巡らすことである。
米国インテルのムーア元会長は、かつて「コンピュータは3年間につき4倍の速度で進化する」という「ムーアの法則」を唱えたが、これに従って累乗すると、コンピュータは10年間でおよそ100倍の進化を遂げることになる。実際、一昔前は3億円もした大型コンピュータが、今日小型化し30万円以下で入手できるようになっている。ツールとしてのコンピュータは、自治体内にも急速に浸透しつつある。
情報通信ネットワークを用いた地域情報化をめぐる基本戦略の方向性としては、以下の5つが挙げられる。
地域内の高度情報化
地域内情報の共有化を図るため、電子メール、テレビ会議、イントラネット等を活用してネットワーク化を進めることが必要である。コンピュータ・ネットワークを導入している自治体は全国の10%にも満たないが、コンピュータの進化の速度に対応して、まず地域がいかに「情報の共有化」を図るかが重要な鍵を握る。
従来型サービスへの情報技術の導入
岡山県総社市では、シャープ等が開発した液晶パソコンを組み込んだ冷蔵庫を介し、日常の地域情報を流している。将来、日本の各家庭がこの冷蔵庫を使用するようになると、地域活性化に資するのみならず、生鮮食品のネット販売の可能性も広がるなど、その付加価値は非常に高い。
また、象印マホービンが自治体と連携して取り組んでいる「ポットライン」(湯沸かしポットによるホットライン)は、発信機の付いたポットを独り暮らしの高齢者の家に置き、定期的に安否を確認するシステムであり、大いに注目されている。
情報を活用した新たなサービス提供
セコムは本業のセキュリティ事業を核に医療、教育、通販事業等に進出している。また、コンビニエンスストアでは銀行のATM設置、チケット販売、公共料金の支払いが可能となっており、将来、情報拠点としての役割に加え、行政の出先機関として住民登録等が可能となることが期待される。
広報・公聴の高度情報化
インターネットによる行政情報等の広報に関しては、これまでネットワークを通じて、できあがったプロダクトが発信されてきたが、今後、地域開発や施設計画の合意形成に至るプロセスの手法として活用されていくであろう。例えば、東京都三鷹市では、総合計画の策定に当たり、ホームページによる素案の周知とEメールによる意見募集を行なったが、このようにネットワーク・コンピュータの双方向(インタラクティブ)機能を活用して、政策決定のプロセスを共有することが今後一層重要となろう。
新事業の展開
山形県白鷹町では、必ず一度は現地で酒造りに参加することを条件とした地酒購入をインターネットで呼びかけたが、大変な反響があった。これは、地域の情報発信によって白鷹と関係のなかった人々が山形県を訪れるなど、新たな人の交流、地域の活性化を図る上で画期的である。
このように、通常、市場の流通ルートに乗らないものをネットに載せることで、全く新しい事業を展開することが可能となる。
自治体のインフラ整備はまだら模様であり、定型化した業務をこなす「電算機」としてコンピュータを捉えているなど、まだ充分に情報化の動向に対応できていない。
また、最新のコンピュータを使用して学習した小学生が、中学校、高校へと進学していく過程で、かえって陳腐化したコンピュータを使わざるを得ないという荒唐無稽な事例も散見される。さらに、自らの行政区域に固執せず、より広域的にネットワークを構築する必要がある。
今後は、複数のコンピュータを分散させながらネットワークを構築するとともに、東京中心的な物の見方から脱却し、地域発の情報に耳を傾けさせることができるよう、取り組んでいくことが重要である。
要はあまり難しく考えず、身近な問題のソリューションに応用することから考えていくべきだろう。