経団連くりっぷ No.112 (1999年11月11日)

深谷通産大臣との懇談会/10月14日

新内閣発足を受け、深谷通産大臣と懇談


10月5日の新内閣発足を受け、経団連はじめ経済四団体では、深谷通産大臣との懇談会を開催し、当面の重要施策をめぐり懇談した。通産省側からは、深谷大臣のほか、細田総括政務次官、茂木政務次官はじめ幹部が、また、経済四団体側からは、今井経団連会長、稲葉日本商工会議所会頭、小林経済同友会代表幹事、鈴木日本経営者団体連盟副会長はじめ各団体幹部が出席した。

  1. 深谷 通産大臣挨拶要旨
    1. 経済は明るさを取り戻してきたが、雇用情勢、民間設備投資、個人消費などを見ると、本格回復の軌道に乗ったとはいえない。総合経済対策の策定ならびに第二次補正予算の編成にあたっては、第1に、景気の腰折れを招かないよう、十分な公需を確保すること、第2に、個人消費、民間設備投資を刺激するための施策を講じること、第3に、構造改革を一層推進すること、が重要であると考えている。

    2. 次期臨時国会は「中小企業国会」といわれている。既存の考え方にとらわれず、中小企業は経済の牽引車であるとの考え方に立って、斬新な施策を打ち出していきたい。

    3. 11月末に開催されるWTO閣僚会議においては、貿易立国日本の主張の反映に努め、来年から始まる交渉の枠組みつくりに資することとしたい。

    4. 東海村の臨界事故は誠に遺憾だが、わが国エネルギー政策における原子力の重要性に変わりはなく、引き続き推進していく。その際、安全性を確保することが何より重要であり、事故の原因を見極めた上で、法改正や新たな立法措置も検討していきたい。

  2. 経済団体側発言要旨
    1. 稲葉 日商会頭
      1. 中小企業の景況は引き続き厳しい。中小企業対策を含む思い切った規模の対策の実施が必要である。

      2. 新規創業・ベンチャー企業支援、中小企業の経営革新の促進等のための施策を講じてほしい。特に中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)の予算規模を拡大されたい。また、特別保証枠の追加等いわゆる貸し渋り対策、ペイオフ解禁を控えた決済性預金の保護等セーフティネットの整備に十分配慮願いたい。なお、小規模企業の経営基盤強化についても、きめ細かい対策を講じられたい。

      3. 税制改正については、事業承継税制の拡充、同族会社に対する留保金課税の廃止、固定資産税の負担軽減等に特段の配慮をいただきたい。外形標準課税の導入には絶対反対である。

    2. 小林 同友会代表幹事
      1. 漸く景気が上向いてきたが、政策のスローダウンは禁物である。

      2. あらゆる政策が構造改革につながるようにすべきである。産業・事業の再編、新事業への取組みを促進するための税制改革、規制改革が必要である。産業活力再生特別措置法の税制措置の恒久化、エンジェル税制の拡充、連結納税制度の早期導入、会社分割に係る税制措置等をお願いしたい。

      3. マクロの経済状況はいま一つだが、ミクロでは先行き希望の持てる兆しが現れている。そのようなミクロの情報を収集・提供し、企業の間に同様の取組みが広まるようにする必要がある。

    3. 鈴木 日経連副会長
      1. 第二次補正予算の編成にあたっては、21世紀にまで役立つ分野、情報通信革命に向けたインフラ整備に資する分野、民需を喚起するような分野に重点的に予算を配分すべきである。

      2. 連結納税制度の早期導入、中小企業・ベンチャー企業の育成ならびに技術開発の推進に役立つ税制改正を実施してほしい。

      3. 雇用創出計画の前倒し、緊急雇用対策の促進、改正派遣法・職安法の早期施行などを積極的に推進されたい。

      4. 基礎年金財源の目的間接税化、厚生年金基金の代行部分返上などの公的年金改革、確定拠出型年金の導入を含む企業年金改革を積極的に推進願いたい。

    4. 今井 経団連会長
      1. 景気の自律的回復のため、切れ目のない財政出動が必要である。その際、都市・交通・物流基盤の整備など乗数効果が大きく、構造改革に資する分野へ公共投資を重点的に配分すべきである。ミレニアム・プロジェクトを早期に確定して実施願いたい。

      2. 企業が構造改革を進めやすいよう、会社分割法制・税制の整備や連結納税制度の2001年度導入など税制・法制の抜本改革を推進されたい。また、土地に対する固定資産税の実効税率は0.4%程度に収斂させるよう配慮願いたい。

      3. 戦略的な産業技術政策を推進すべきである。ミレニアム・プロジェクトについては、省庁横断的な取組みと複数年度にまたがる資金の確保をお願いしたい。

      4. 次期WTO交渉において、アンチダンピング、投資ルールなど、わが国経済界の関心事項が交渉テーマとして取上げられるよう尽力願いたい。

  3. 深谷 大臣発言要旨
    1. 総合経済対策は事業規模で10〜12、13兆円となろう。21世紀につながる事業や情報・環境分野等への配分に配慮したい。

    2. 中小企業・ベンチャー企業支援策によって開業率を高め、現在の14万社から年間24〜25万社が創業するようにしたい。中小企業に対する信用保証枠については、今後の状況を睨みながら、中小企業にマイナスの影響がないよう必要額を確保する。SBIR制度も拡充したい。

    3. 連結納税制度については、2001年度に確実に導入されるよう努力したい。外形標準課税については、中小企業の負担増につながる恐れがあり、慎重に対処する。固定資産税の実効税率引下げは引き続き主張していく。

    4. WTO交渉においては、できるだけ広範な分野のルール作りを目指す。アンチダンピングについては、保護主義的運用の問題を引き続き指摘していく。

  4. その他
  5. 以上の他、経済界側出席者より、原子力の安全性確保には、関係者の安全意識の徹底、心構えが何より重要である旨の発言があった。


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