評議員懇談会(座長 那須 翔 評議員会議長)/10月15日
評議員約80名の出席を得て、評議員懇談会を開催した。当日は、那須評議員会議長、今井会長から挨拶があった後、第1分科会「税制・社会保障制度の改革」(座長:福原評議員会副議長)、第2分科会「産業競争力の強化−雇用・労働・教育分野を中心に」(座長:橋本評議員会副議長)に分かれて懇談した。
景気を民需主導の自律的な回復軌道に乗せるには、もう一段の政策の下支えが必要である。第二次補正予算等を質量ともに充実したものにする必要がある。
企業が構造改革を円滑に進めるには、税制、法制面の抜本改革が不可欠であり、産業の競争力強化に向けて、改革を継続しなければならない。
企業や勤労世代にとって大きな負担となっている社会保障制度の改革も避けて通れない。あるべき姿を念頭に置き、筋の通った改革を行なうべきである。
この正念場を乗り切って経済再生、経済新生を遂げるには、景気の自律回復に向けた施策と構造改革のための施策を、同時並行でバランス良く展開する必要がある。
景気は緩やかながら回復に向かっているが、民間設備投資は容易に回復しないと考えられ、予断を許さない。円高が輸出に与える影響や国債増発が長期金利の上昇を通じて経済に与える影響も依然懸念される。
経団連の新内閣への要望のポイントの第1は、切れ目のない経済対策の実行である。補正予算を12月上旬までには成立させ、来年1〜3月に間に合うよう早期に執行する必要がある。また、事業承継税制やエンジェル税制の拡充・強化といった歳入面からのてこ入れも必要である。さらに、雇用・労働分野の改革が不可欠である。
第2は、税制・法制の抜本改革である。景気回復が確実になった段階からは、サプライサイドから経済を活性化し、民主導の経済成長を実現しなくてはならない。そのためには、税制・法制が、経営の革新や経営形態の多様化を阻害しないようにしなければならない。とりわけ、会社分割法制の整備、企業の組織変更に伴う譲渡益非課税・登録免許税の減免等の措置、連結納税制度の2001年度の導入、が不可欠である。
第3は、社会保障制度の再構築である。持続可能な制度に再構築し、国民負担率の上昇をできる限り抑制していく必要がある。三党連立政権合意を着実に実行するとともに、合意にはない企業年金や医療制度の改革も進める必要がある。早期改革に向け、改革ムードを盛りあげていきたい。
第4は、金融システムの強化である。ペイオフ凍結解除は予定通り実施すべきであるが、準備もなく実施しては金融不安が再燃しかねない。国民のニーズに的確に対応し、健全な資産形成と経済社会の活性化を図るためにも、凍結解除に備えた、国民負担最小化のための新しいセーフティネット整備や金融サービス法制定等が必要である。
資源のないわが国が経済成長を遂げていくには、資本と労働の生産性を高めていかなければならない。そのためには産学官が協力して産業の技術力を抜本的に強化していく必要がある。その一環として情報化、高齢化、環境の3分野について「ミレニアム・プロジェクト」をつくりあげていくこととしており、現在、官民が協力して具体的プロジェクトの選定作業を進めている。戦略的な産業技術政策の推進には、産学官による産業技術戦略の早期構築に加えて人材育成と教育改革も重要である。
以上を官民が協力、補完し合いながら同時並行的に進めなければ、景気の本格回復も日本経済の再生もない。
宮部税制共同委員長説明要旨
福原社会保障制度共同委員長説明要旨
懇談要旨
立花常務理事説明要旨
懇談要旨