経団連くりっぷ No.112 (1999年11月11日)

第4回日本ロシア経済合同会議(団長 安西邦夫 日本ロシア経済委員長)/10月20〜22日

第4回日本ロシア経済合同会議を開催


日本ロシア経済委員会では、さる10月20〜22日、モスクワ、サンクトペテルブルグで第4回合同会議を開催した。前回合同会議から2年ぶりの開催である。日本からは、安西委員長はじめ、金子副委員長(NEC相談役)、安崎副委員長(小松製作所社長)、河毛顧問(王子製紙相談役)ほか約100名が、ロシア側は、ヴォリスキー委員長(ロシア産業家企業家連盟会長)、リフシツ大臣ほか関係省庁、地方政府、企業の幹部約100名が参加した。

  1. 合同会議の目的と構成
    1. 日ロ経済関係は、橋本・エリツィン・プランの推進、新外国投資法の導入等により、交流促進のための基盤は整備されつつあるが、貿易も直接投資も活発ではない。その背景としてロシア国内情勢の不透明性等が指摘されるが、主要先進国に比べても疎遠であることは否めない。しかし、その一方で豊富な天然資源、大きな国内市場、人材を擁するロシアは大きな潜在力を持っており日本からの直接投資の事例も徐々に出始めている。そこで、ロシアが通貨危機を克服し経済の立ち直りが見え始めたこの時期を捉え、交流促進の土台を構築する契機とすべく合同会議を開催した。

    2. 今次会議では、「日ロ経済関係と企業経営」「ロシア政府の産業政策、制度改革、日ロ経済交流活性化に向けた政策」「投資・貿易の促進に関するロシア政府担当者・州政府首脳との懇談」の3つのセッションを設け、さらにフリスチェンコ第一副首相との会談を行なって、日ロ経済交流の促進に向けたロシア政府・経済界の考え方を具体的にきいた。また、新たな試みとして「科学技術交流の促進」に関するセッションを設け科学技術分野における交流スキームの構築に向けた話し合いを行なったほか、特別セッションとしてロシアに進出している欧米系企業との経験交流を行なった。また、サンクトペテルブルク市およびノブゴロド州を訪問し行政府、企業、研究所等との懇談を行なった。

  2. 会議の概要
    1. ロシア政府としては、日ロ経済交流の重要性を十分認識していること、対外経済交流促進に向け関連制度を整備中で、すでに新外国投資法が発効しており、今後は、法令間の整合性の確保、運用基準の透明性確保に努力したいと強調した。さらに、1998年8月の経済危機の経験から、投機目的の短期資金を規制する一方で、実体経済を下支えする長期資金を呼び戻すためプロジェクトの立案、税制整備等を進めるとの考えを述べた。
      これに対して、日本側からは、信頼できるビジネス環境を形成するため、投資保護協定を早期に批准し同協定に基いた紛争処理スキームの確立を要請、また、商取引に関る諸法の整備、保証機能の充実が必要であること、さらにロシアの対外債務問題の解決に向けた具体的方策を明示すべきことを指摘した。

    2. ロシア企業は日本はじめ先進諸国企業のノウハウに関心を持っており、日本や欧米企業との合弁を通じて生産技術の向上や消費者ニーズの把握といった企業経営のノウハウを吸収したいと述べた。これに対して日本側からは、日本企業はグローバリゼーションを進めており、そのプロセスでロシアの存在を重視している旨を指摘した。

    3. 極東での協力プロジェクトの実現はロシア側の最大関心事項の一つであり、例えばサハリン〜ハバロフスク〜沿海州を結ぶガス・パイプライン建設は、誘発投資を喚起するし、物流スキームの合理化は物価引下げなどの経済効果を生み出すとのロシア側発言に対し、日本側からは、州政府や銀行などと日本の銀行による短期貿易取引促進のための融資スキームを構築していく必要もある旨を指摘した。

    4. 日ロ経済交流を促進する可能性を秘めた新たな分野として科学技術交流があるが、この促進に向け日ロ双方で組織づくりに着手することとなった。具体的には、産官学一体の日ロ科学技術交流の促進にむけて、科学技術省を中心とした組織をロシア側に設置、日本側も日ロ経済委員会の下に部会を新設する方向で準備を進めることが合意された。

    5. 経済交流活性化の潜在的可能性は大きいが、相互の認識不足に問題があるとして、その改善のため、日本側からは、民間経済交流促進のためにはロシア側委員会の組織強化が重要である旨を指摘したところ、ロシア側も同意した。

    6. ロシアに進出している欧米系企業との懇談では、やり方次第でロシア市場は魅力的なものになる、特にロシア市場を熟知している欧米系の弁護士、会計士と連携して信頼できるパートナーを選定することが肝要である、とこれら企業の代表は指摘した。

  3. 行動指針の採択
  4. 合同会議の成果として、双方委員会による行動指針が採択されたが、その要点を紹介すると以下の通りである。

    1. ロシア側は日本の日本ロシア経済委員会に対応するようなロシア経済界全体を代表する民間ベースの組織を設立する。

    2. 日ロ極東経済協力ワークショップの枠内で最優先で検討されている7つの案件(ガスパイプライン、発電所、港湾など)の実現に向けて、双方政府の具体的な支援を要請する。

    3. 日ロ極東経済協力ワークショップにおいて、日本とロシア極東との貿易を促進する方策の検討を進める。

    4. 科学技術交流の促進を目的として、日本側は日本ロシア経済委員会の中に部会を、また、ロシア側は科学技術省をはじめ関連機関が参加する組織を設置する方向で検討する。

    5. 日ロ両政府に対して以下を要請する。

      1. ロシア側諸制度(法・税・会計など)の更なる整備と国際協力銀行による懸案の融資案件の実施促進、中長期貿易保険の引受け実施。
      2. 日ロ共同投資会社の早期設立に向けた作業の促進、ロシア側の日ロ投資保護協定早期批准。
      3. シベリアランドブリッジ活性化を検討するための日ロ官民合同作業グループの設置。

次回の合同会議は、2000年の双方が合意する時期に東京で開催する予定である。


くりっぷ No.112 目次日本語のホームページ