経団連くりっぷ No.112 (1999年11月11日)

建設省道路局との意見交換会(司会 濱中昭一郎 輸送委員長)/10月27日

来年度道路関係予算概算要求・施策につき建設省道路局と懇談


本意見交換会はこれまで、道路行政に関して行政側と経済界が自由に意見交換を行なうことを目的として適宜開催されてきた。今回は、懇談テーマとして来年度道路関係予算の概算要求ならびに施策を取り上げ、大石久和道路局長をはじめ道路局幹部より説明をきくとともに意見交換を行なった。

  1. 建設省道路局側説明要旨
    1. 大石道路局長挨拶
    2. 中央省庁再編に伴い、建設省は2001年1月より国土交通省として新体制に移行する。今後、より幅広い観点から道路行政に関わる施策を展開していく必要がある。
      今後の道路整備のあり方については、景気対策に止まることなく、ストックとして効果の大きい社会資本を21世紀の国民にどのような形で残すかという視点からの議論が必要である。例えば、光ファイバー網整備、電線の地中化、高度道路交通システム(ITS)等が促進されているなか、道路という社会資本の概念が「進化」ならびに「深化」している。道路が果たすべき役割について、一層議論を深めていきたい。
      また、今般、低燃費車の普及促進を図る「グリーン税制」の導入が議論されているが、自動車取得税割引等、他の税制との整合性を考慮して慎重に対応すべきである。

    3. 平成12年度道路関係施策の概要等
      (谷口博昭道路局企画課長説明)
    4. 平成12年度道路関係予算概算要求は、国費ベースで総額3兆4,592億円(対前年度比1.04倍)となっている。この内、有料道路に対して4,636億円という比較的大きな予算を要求している。また、一般道路については、高規格幹線道路および地域高規格道路を重視した要求をしている。

      1. 都市圏の交通円滑化
        近年、モータリゼーションの進展に伴い道路渋滞が一層深刻化している。国土交通省として統合する運輸省との連携を図りながら、駅周辺の交通環境の向上、踏切道・連続立体交差化事業等の対策によるまちづくり支援を行なっていきたい。

      2. 有料道路制度の活用
        適正な料金水準のもとで有料道路制度を活用し、圏央道・外かん・中央環状等の首都圏およびその他の大都市圏の環状道路の早期整備を図るため、国費助成の充実、償還期間の延長等に取り組む。

      3. 地域連携と物流効率化の支援
        高規格幹線道路等に重点的に予算を投入し、物流効率化を支援するための空港・港湾へのアクセス道路など、高速ネットワークの整備をさらに進める。
        また、地域の活性化を促進するため、一般道路事業を活用して追加インターチェンジを整備する「地域活性化インターチェンジ制度」を来年度創設する。
        さらに、都市内物流の効率化を図るため、中心市街地等において複数箇所の小規模な駐車スペースを整備し、荷捌き事業を一体的に運営する。

      4. 高度情報通信社会に向けた道路情報化
        道路下に光ファイバー等を敷設する「情報BOX」は民間からの利用意向も強く、平成11年度末までに12,600kmを整備する予定であり、来年度はさらに1,600km程度を整備したい。
        また、2010年を目途に道路のスマートウェイ化を図るべく、来年度も予算要求している。特に、料金所渋滞の緩和を目指すノンストップ自動料金収受システム(ETC)は、今年度末に東京湾アクアライン、京葉道路、東関道等で実用化されるが、来年度はさらに東北道、東名、名神、山陽道等について、道路整備5ヵ年計画の予定を前倒しして促進したい。

      5. 地球環境の保全と沿道環境の改善
        地球温暖化対策は喫緊の課題である。バイパスや環状道路の整備、交差点立体化や交差点改良等の道路ネットワークの整備等による交通の円滑化によって、2010年時点で年間1,000万トンのCO2削減効果を見込んでいる。また、時差通勤の推奨等の交通需要マネジメント(TDM)施策の推進、ETC整備等の高度道路交通システム(ITS)の推進によって、1,300万トンの削減を期待している。
        さらに、沿道の騒音や大気の質の改善を目指し、今年度着手した「沿道環境改善事業」を来年度も引き続き促進したい。
        なお、11月上中旬を目途に作業を行なっている第2次補正予算においては、21世紀型社会インフラの整備に関して、災害復旧を含む公共事業について2兆5千億円、施設費等の非公共事業について1兆円が計上されており、合わせて3兆5千億円の予算措置を講じることとしている。これに予備費5千億円を加算すると、昨年の第3次補正予算よりも若干の増額となっている。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 経団連側:
    電線類の地中化はわが国ではコストが高すぎ、実現が難しいのではないか。
    建設省側:
    1994年度までは、面積の大きなキャブシステムによって地中化を行なっていたが、95年度以降は、コンパクトな電線共同溝の活用により、道路管理者として1km当たり2〜3億円での建設が可能である。

    経団連側:
    空港や港湾へのアクセス道路の整備についてどのように捉えるか。
    建設省側:
    欧米に比して日本の整備状況は著しく立ち後れており、道路整備5ヵ年計画では平成14年度末までに、空港への連絡率を現在の46%から58%、港湾については現在の33%から38%まで引き上げることを目標に鋭意取り組んでいる。

    経団連側:
    「道路は国民全体の共有財産」という観点から、道路財源を揮発油税等の特定財源に依存せずに、広く一般財源から充当してはどうか。
    建設省側:
    その通りだが、補正予算や地方の事業等では、一般財源が相当程度投入されている。

    経団連側:
    土地収用ならびに道路工事の円滑化・短期集中化を望みたい。
    建設省側:
    3年間で10%の工事コスト縮減を図っている。わが国は地籍確定が遅れている唯一の先進国であり、コスト削減の観点からも地籍確定を急ぐ必要がある。


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