経団連くりっぷ No.112 (1999年11月11日)

情報通信ワーキング・グループ第4回会合(座長 立花常務理事)/10月21日

情報通信法制における手続規定の明文化が必要


情報通信ワーキング・グループでは第4回会合を開催し、大阪大学の鬼木 甫 名誉・客員教授より、情報通信事業における公的規制と競争政策のあり方について、説明をきくとともに懇談した。

鬼木名誉・客員教授説明概要

  1. 情報通信法制・行政手続等の問題点
    1. 法令規定が抽象的で、一般的なことしか書かれていないため、行政の裁量の余地が大きくなっている。事業者は行政当局と円滑な関係を築くことに注力してしまい、企業の創造的な活動を阻害している。また、法の目的に競争に関する規定が盛り込まれていない。

    2. 事業者・ユーザーのための行政手続・行為に関する法規定が欠落している。審議会や省議など、非公開の内部慣行で行政決定がなされており、決定プロセスも公開されない。文書化による諸問題への解決がなされておらず、相互理解・人間関係で漠然と物事が決められている。さらに、行政一体で規制・産業振興に当っているため、決定の中立性が保たれにくい。

    3. パブリック・コメント制度の導入は評価できるが、単に事業者の反応を伺うだけにとどまっている。米国では政策を決定する際、パブリック・コメントが義務づけられており、事業者等の意見とともにそれに対する行政側の見解を文書で公表し、さらに意見を求める。

    4. 法律の見直しは容易ではない。米国では、法律の大事な事項を2年毎に改正していく。

    5. 電波の譲渡は実質禁止されており、一度免許を取得すると半永久的に免許を維持するため、新規参入が実質上不可能である。

  2. 今後の改革の方向性
    1. 法の目的として、在住外国人を含む日本国民が情報通信サービスを最大限に享受することを掲げるべきである。

    2. 行政手続規定を整備すべきである。手始めに、現在の明文化されていない手続・慣行を明文化し、簡単な事項から複雑な事項へと順次規制を是正していくべきである。

    3. 行政当局は、事業参入・活動の自由の保証と市場支配力を有する事業者に対する規制などにより、通信市場における自由で公正な競争の実現のための環境整備を行なうとともに、ユニバーサル・サービスの維持など自由競争だけでは実現できないことに注力すべきである。

    4. 周波数割当は、使用権をレンタル・リースという形で期限を区切り、利用料のみにオークション制度を導入すべきである。

    5. CATVや固定無線アクセスなど複数の広帯域アクセスの手段が出てきているが、いずれの手段でもイコール・フッティングの競争ができるような環境を整備すべきである。その際、 資源の実質的価値の高いもの(電波・とう道など)は、だれでも同一条件で使用できるようにすべきである。


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