経団連くりっぷ No.112 (1999年11月11日)

ムーアWTO事務局長との懇談会(座長 槙原 稔 貿易投資委員長)/10月18日

次期WTO交渉の成功には全加盟国の理解と参加が不可欠


WTOのムーア事務局長の訪日を機に昼食懇談会を開催した。ムーア事務局長より、11月末からシアトルで開催される第3回WTO閣僚会議および来年からの次期貿易自由化交渉の見通し等をきくとともに、当会側からは、次期交渉に対するわが国産業界の要望を伝えた。

  1. 槙原委員長発言要旨
    1. 日本の産業界は、次期交渉に強い関心を有しており、サービス貿易自由化協議会を設置するなど、取組みを強化している。

    2. 次期交渉は、包括的でバランスのとれたものとすべきである。特に、アンチダンピング(AD)の規律強化、投資ルール策定等を重視している。

  2. ムーア事務局長発言要旨
    1. 次期交渉を成功させるためには、多様なWTO加盟国の全ての支持を得る必要がある。交渉分野を大きく広げすぎると途上国の支持が得られない可能性がある。先般、開発途上国によるG7閣僚会議に出席し、理解を求めたが、自由貿易は新しい形の植民地主義ではないかといった誤解が未だにある。そこで、WTOの情報発信の強化を検討するための作業部会を設置した。また、途上国への技術支援をさらに強化する予定である。なお、ラ米諸国は議題を広範なものとすることに前向きである。

    2. 次期交渉の対象分野として、シアトル閣僚会議で最低限合意できるものとしては、既に交渉が決まっている農業、サービスの両分野に加え、

      1. 電子商取引、
      2. 貿易円滑化、
      3. 工業品関税引き下げ、
      4. 途上国への技術支援、
      5. 政府調達の透明性、
      と見られる。

    3. 今回の閣僚会議に向けて、NGOが自由化に反対する動きを強めていることを危惧している。会期中には多くのNGOがシアトルに参集することが予想される。

    4. WTOには紛争処理機能があるために期待が集まり、人権、環境等、多くの問題が持ち込まれるが、ILOなど他の国際機関との連携が重要と考える。

  3. 懇談要旨
  4. ムーア事務局長:
    投資ルール策定は途上国の支持が得られない。また、米国もMAI(多国間投資協定)の失敗から消極的である。他方、欧州は前向きである。
    経団連側:
    途上国の懸念を払拭していくことこそ先進国の役目であるとの意識は、日米産業界間でも共有されている。

    ムーア事務局長:
    ADについては、閣僚会議のホスト国である米国が強く反対しており、政治的な影響を配慮せざるを得ない。
    経団連側:
    ADが米国にとって難しい問題であることと同様、欧州やわが国にとって農業は難しい。それゆえ包括的な交渉が重要だと考える。


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