経団連くりっぷ No.113 (1999年11月25日)

なびげーたー

最終段階に来た消費者契約法の立法化

経済本部長 角田 博


事業者と消費者が互いに自己責任を認識し、消費者取引でのトラブルを円滑に解決するために、消費者契約法の早期成立が必要。

消費者契約法の立法化に向けた国民生活審議会の議論が大詰めを迎えている。同審議会消費者政策部会では昭和46(1971)年以来数次にわたってこの問題に取り組み、本年1月「消費者契約法(仮称)の制定に向けて」と題する最終報告を取りまとめた。その後傘下の委員会で、事業者、消費者へのアンケート、ヒアリングを行ない、それを踏まえて要綱案ともいうべき「消費者契約法(仮称)の具体的内容について」が事務局から提出されて、現在活発な審議が行なわれている。メンバーの一人として経団連会員企業の意見を集約し、審議に反映させるべく努力してきた。しかし、網羅的にトラブルを対象にしようという消費者に対し、明確性を求める事業者という図式の中で、事業者の中にも各論ではさまざまな意見があり、難しい対応を迫られている。

経団連では、昨年12月に意見書を公表し、消費者契約法の立法化を求めるとともに、

  1. 新法と民法や業法等との位置づけを明確化する、
  2. 現在深刻なトラブルを起こしていない正常な事業活動に配慮する、
  3. 事業者、消費者双方にとって予見可能性の高い法律とする、
  4. 消費者、事業者双方の自己責任原則を強調すべき、
との意見を述べた。具体的には、情報提供義務の対象としての「消費者の意志決定に必要な基本事項」、消費者が契約を取り消せる要件としての「威迫・困惑の概念」、「不当条項」等の明確化を求めている。

委員会の場では、消費者代表、弁護士、学者には消費者は弱者で、保護すべきと考える人が多い。消費者相談窓口に寄せられている、販売目的を隠して消費者に近づく恋人商法とか暴力団まがいの勧誘のトラブルを防ぐために、消費者契約法でできるだけ広く、細かい網をかぶせるべきと主張する。

これに対して、経済界の立場から、一部の悪徳事業者が引き起こすトラブルをこの包括的民事ルールで解決するのは不可能であり、予見可能性の低い立法が行なわれれば大部分の善良な事業者も多大なコストをかけてそれに対応せざるを得ず、その場合の社会的コストと効果とを秤にかけて、バランスのとれた立法化が必要であると反論してきた。

グローバル化が進み日本型閉鎖社会からの脱却が求められている中で、消費者の自己責任原則の確立が強く求められている。それを前提に消費者契約法の具体化を考えるべきである。

一方、事業者の側でも今回の立法化を契機に改めて取引の現状を再点検し、トラブルの削減に努めるとともに、電子商取引等新しい取引手法の導入に際しても、本法の趣旨を尊重したトラブルへの対応をお願いしたい。


くりっぷ No.113 目次日本語のホームページ