経団連くりっぷ No.113 (1999年11月25日)

ドイツ連邦共和国 シュレーダー首相歓迎昼食会(経済5団体共催)/11月2日

世界経済の運営でも日独協力が必要


経団連はじめ経済5団体は、公賓として来日したシュレーダー首相を迎え、昼食会を開催した。席上、首相は独経済の見通しを説明するとともに、日独関係の重要性を強調した。なお、当日は昼食会に先立ち、首相等と5団体代表が「東アジア経済」をテーマに懇談し、同地域における日本経済の重要性を確認するとともに、アジア経済が回復基調にあることで認識が一致した。

シュレーダー首相講演要旨

  1. 日独関係は、日独センターの設立、日独ハイテクおよび環境技術に関する評議会や日独フォーラムの開催、Japan Initiative(中小企業支援中心)の推進などによって、さらに強化されつつある。
    日独が重要な貿易パートナーであることは間違いない。アジア危機後の不況も底を打ったと思われるが、こうした中、日本の対独輸出が低迷する一方で、独の対日輸出は増加している。これまでの両国の貿易収支を考えるとバランスのとれたものとなりつつある。

  2. 日独は世界経済の運営でも協力が必要である。世界貿易に共通の関心を持つ日独両国は、グローバル化の中で開かれた市場、透明な市場を維持し、保護主義を排することの重要性を十分に認識している。
    シアトルでのWTO閣僚会議において、次期交渉が包括的なものとなるよう協力したい。もちろん、農業などでの利害衝突があるため厳しい交渉にはなろうが、日独は同じ立場である。これは、ロシア、中国の早期WTO加盟についても同様である。

  3. 独は最近公表された6大経済研究所の見通しで2.7-3.0%成長となっているが、平均所得層に対して段階的に減税を行なうこととしている。これは国内需要を刺激し、景気回復基調を維持するためである。雇用を安定し、政府債務が増えないよう支出を削減することも課題である。財政改革を行ない、長期的に政策の自由度を高めなければならない。
    企業税制についても改革する。財政に余裕が出れば、2001年には法人事業税を25%とし、法人所得税を加えても税負担を35%とする。
    失業率の低下は最大の目標である。経済構造の近代化による新たな雇用創出には、社会の幅広い支持が必要である。政界、経済界、労働界の対話が必要であるが、各国の経験も学びたい。

  4. EUの東方拡大において、独は有利な立場にある。旧東独地域(新5州)には人材が豊富で、東欧に通じた経営者も多く、各国言語に堪能な人も多い。この意味で、新5州は投資先としても魅力的である。

  5. 経済関係をさらに深めるためには、文化的な面で日独両国が大きく異なっていることを理解することも重要である。「ドイツにおける日本年」が始まった。来年には「ハノーバー万博」も開かれる。こうした行事の中で、両国の交流がさらに深まることを期待している。


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