経団連くりっぷ No.113 (1999年11月25日)

日本カナダ経済委員会(委員長 奥田 碩氏)/11月2日

日加経済関係の多様化に向けた民間からの提言に期待


日加経済関係の多様化に向けた課題についてカナダ大使館のマクドナルド経済担当公使、および通産省の今野通商政策局長より説明をきいた。また、来年5月の日本カナダ経済人会議に向けて、日本側意見を取りまとめるため日本カナダ経済委員会の中に「日加経済関係の多様化に向けた検討会(座長:財前宏三菱商事顧問)」を設置することを決めた。

  1. マクドナルド公使説明要旨
    1. 1998年以降、カナダの総輸出の約8割は製品輸出であるにも関わらず、対日輸出に関しては、依然、天然資源関連の輸出が太宗を占めている。カナダ大使館は、日加貿易がより付加価値の高いハイテク分野においても拡大し、多角化することを期待している。
      特にカナダ企業側のPR努力不足の問題もあって、定評あるカナダのハイテク産業が日本ではあまり知られていない。これには多くのカナダ企業が、日本市場は成熟市場で、競争が激しく日本語の問題もあって、進出しにくいと考えているという問題もある。今後は、カナダ企業と協力してこうした課題を克服し、新分野における日加協力関係を発展させたい。

    2. こうした認識に基づき、さる9月、カナダ政府はクレティエン首相を団長に、連邦・州政府の代表および270社のカナダ企業代表から成るチーム・カナダを日本に派遣した。チーム・カナダでは電力・新エネルギー、環境技術、情報通信、教育、建設技術・機械、食品・バイオ技術、宇宙、健康・医療機器等のハイテク分野を特定し、大阪と東京でさまざまなセミナーを開催した。これらの分野はカナダ企業に世界クラスの競争力があり、また日本市場に成長の見込める分野である。

    3. チーム・カナダの訪日は成功したが、真の成功は今回の訪日の結果もたらされるビジネス機会の拡大である。カナダ大使館は年末から来年にかけて、カナダ企業のフォローアップとアウトリーチ活動を行なう。カナダにおいて今回チーム・カナダに参加したカナダ企業が日本市場に関心を持ち続けるよう個別にコンタクトする他、日本でもセミナーに参加した日本企業にコンタクトしていきたい。

    4. 通産省と日本貿易振興会(ジェトロ)がトロント大学のドブソン教授に委託した日加経済関係の将来展望に関する調査結果(ドブソン報告)について、カナダ政府は公式な評価は行っていない。しかし、同報告書が指摘している優先分野は、チーム・カナダの特定した分野とほぼ重なっている。また同報告書の提言する「日加間の2010年までの貿易・投資自由化」は、日加両国がすでにAPECの自由化プロセスにおいてコミットしていることである。勿論、日加二国間で進める自由化措置はWTOの要件と矛盾しないものでなくてはならない。

  2. 通産省 今野局長説明要旨
    1. 日加間の貿易・投資関係は安定しており、カナダは日本企業にとって大切なパートナーである。政府ベースでもカナダ政府との協力は緊密で、WTOの新ラウンド交渉の準備過程においてもカナダ代表とはよく相談している。カナダは米国を熟知しており、公正な目で貿易システムを見ている。

    2. チーム・カナダのフォローアップに関して民間には二つのことを期待している。第1はチーム・カナダの焦点であったハイテク分野で実際に日加間のビジネス関係が深まること、第2はより長期的な視点から日加関係を多角化する方策について検討することである。
      政府においてもジェトロを中心にチーム・カナダのフォローアップ体制をとっている。ジェトロはカナダ3カ所の事務所にチーム・カナダのフォローアップ窓口を設置して、チーム・カナダに参加したカナダ企業の相談を受けている。また10月21日にカナダでフォローアップ・セミナーを開催した。

    3. 「ドブソン報告」にはグラビティ・モデルという手法(二国間の貿易は、国の面積、生活水準、二国間の地理的距離、為替レート等を変数としたモデルで計算する)を使って、日加間の潜在貿易量を計算し、それを実際の貿易量と比較した分析結果などが含まれている。その結果によると、日加間の実際の貿易量は、理論的に計算される潜在的貿易量の3分の2に過ぎない。他方、日米間の貿易量は潜在貿易量の2倍、カナダと日本以外の東アジアとの貿易量は4倍であるという数字が出ており、日加間の経済関係緊密化の可能性はまだまだ高いことが指摘されている。
      こうした分析結果等をまとめて、ドブソン報告書は、日加間で関係緊密化のポテンシャルが高いのはハイテクなど知識集約型産業の部分であるとし、具体的には、通信、健康サービス、医療機器、環境サービス・製品等の分野を指摘している。具体的な提言の部分で印象深かったのは、日加間では農業等を除くとすでに関税障壁は低いので、今後目指すべきなのは、むしろ、技術的障壁を除くための基準の相互承認などではないかという指摘である。

    4. 現在、バイ、マルチの交渉いずれにおいても民間経済界からの提言が活発になっている。市場がグローバル化する中で、企業がプレーヤーの立場から、各国政府に注文をつけるという流れがある。そういう意味でも、日加経済関係の多角化に向けた日加経済人会議の提言に期待したい。

  3. 質疑応答(要旨)
  4. 経団連側:
    日加間の実際の貿易量が潜在貿易量の3分の2に止まっている原因は何だと思うか。

    マクドナルド公使:
    カナダの輸出をみると、84%が対米国である。その米国において、カナダ製品は米国製品と競争し、売れている。他方、カナダの対日製品輸出を米国の対日製品輸出と比較すると、カナダはかなり遅れている。その理由は主に、カナダ企業が日本に来て十分にPR活動を行なっていないからだと思う。

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