経団連くりっぷ No.113 (1999年11月25日)

欧州委員会モンティ競争政策担当委員との懇談会(座長 小林正夫 経済法規委員会共同委員長)/10月29日

日EU競争当局間の協力協定締結を検討する時期

−欧州委員会モンティ競争政策担当委員にきく


経済法規委員会では、欧州委員会のマリオ・モンティ競争政策担当委員を招き、欧州委員会の最近の競争政策の運用と日EU競争当局間の協力について、説明をきくとともに懇談した。

モンティ委員説明要旨

  1. 欧州委員会の最近の競争政策の運用
  2. 最近の競争政策の運用に関し、(1)カルテル、(2)合併、(3)国家援助を中心に述べる。
    従来、多くの支配的地位の濫用規制に関する協定の届出がなされている一方、実際に許可しない案件はわずかであった。また、ハードコアカルテル等はそもそも届け出てやるようなことはない。そこで、こうした企業間協定の判断の権限を加盟各国の競争当局に分散させた。これにより、欧州委員会は、より困難な事案にエネルギーを注力することとした。
    次に、合併に関し、市場における支配的地位の強化・形成につながる合併は規制され、そのために「集合的市場支配」という新たな概念を導入している。エクソンとモービルの合併等では、一定の営業部門を切り離すことを条件に合併を認めた。
    国家援助は、日米では競争当局が規制していないものである。通貨統合により、市場での競争がますます高まっており、加盟各国が当該国の企業を支援するインセンティブが高まっている。そこで、こうしたことを許さないようにする責務と権限が欧州委員会に与えられている。

  3. 日本の市場・競争政策の運用について
  4. 日本では、規制緩和、構造改革、行政改革が進められている。しかし、競争政策と電気通信分野では、一層の努力が必要である。
    競争政策の分野では、適用除外を縮小するとともに、流通分野における卸売段階のカルテルのチェック、行政指導のチェックを強化することが必要である。
    また、電気通信分野では、一層の市場開放が必要である。特に、既存のネットワークに相互接続する際のコストを下げることが重要である。日米間で、競争当局間の協力協定が締結されたこともあり、日EU間でも、競争当局間協力協定を結ぶ時期が来つつあるのではないかと考えている。
    EU米間の協力協定は、うまく運用されており、ボーイングとダグラスの合併も、この協定により、うまく処理できた。
    中央省庁再編により、公正取引委員会が総務省に属することとなるが、これにより、公正取引委員会の機能が弱まることが懸念される。

  5. 競争政策の国際的な動向
  6. EUは、1996年のWTOシンガポール閣僚会合で、競争の問題を扱うべきであると提案し、その結果ワーキング・グループが設置された。WTOでは、今後、

    1. 加盟国が競争法を整備することに合意し、
    2. コアとなる競争法の原則について合意し、その上で、
    3. 国際的な協力について話し合う、
    という3つのステップで交渉を進めていくべきだと考えている。


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