経団連くりっぷ No.113 (1999年11月25日)

国土・住宅政策委員会 PFI推進部会(部会長 鈴木誠之氏)/11月9日

第1号PFIモデル事業の経験

−東京都金町浄水場常用発電事業


東京都水道局は、東京都金町浄水場においてPFIのモデルとなる事業を立ち上げた。そこで、本事業に参画している清水建設の山下公輔EPCプロジェクト室長から、事業概要やPFI推進のための課題等について説明をきくとともに意見交換を行なった。また、当日は、PFI推進法に基づき、現在、PFI推進委員会で検討されている「基本方針」に関し、経済界の考え方について懇談を行なった。

山下室長説明要旨

  1. 東京都水道局が立ち上げたPFIモデル事業は、2000年10月から20年間にわたって、金町浄水場における平常時の電力および蒸気を供給するサービスを民間事業者が提供する事業である。東京都水道局は1999年1月に募集要項を配布、これに対して11企業グループが一次提案を提出、4月にはもっぱら技術的評価に基づいて第一次審査が行なわれ、5企業グループに絞りこまれた。さらにこれらのグループから二次提案を受付け、7月に経済性の評価に基づいて第二次審査が行なわれ、最終的に、石川島播磨重工業と清水建設、電源開発からなるグループが受注した。10月には、上記3社が出資した特別目的会社が東京都水道局と事業契約を締結、2000年2月に建設開始、10月に営業運転を開始する予定である。

  2. 本事業によって、これまで東京電力からの買電のみに拠っていた浄水場の電力必要量の約半分をPFI事業者からの売電に置き換えることができる。これにより、新型汚泥乾燥装置用の蒸気供給を確保できるとともに、非常時の電力供給を確保できる。
    事業者の選定にあたっては、20年間の総事業費(現在価値換算)による比較で行なわれた。サービス対価は、基本料金と従量料金の二部料金制により、東京都水道局から毎月支払われる。インフレ等の影響を踏まえ、料金は物価指数によりスライドされる。契約では、事業者側のペナルティや水道局側の補償事由がケースごとに詳細に規定されている。

  3. 本事業は、東京都水道局の全体予算のごく一部であること等から、個別の議会承認の対象とならなかった。そのため、比較的自由な事業組成ができた反面、長期債務負担行為の対象とならないなど、PFI特有の契約要件への配慮がされにくい面があった。また、初期投資額が10数億円で、最初のPFI案件としては取り組みやすい規模である一方、本格的なプロジェクト・ファイナンスの対象としては小規模である。
    官民ともにPFI契約の締結は初めての経験であったが、公募から契約に至るまで短期間で成約できた。また、二段階審査等を通じて、透明性、公開性が確保された。
    PFI事業推進のための今後の課題として、長期債務負担行為の位置づけの重要性、補助金額の確定時期と契約締結との関係、契約書類の在り方等が挙げられる。


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