経団連くりっぷ No.114 (1999年12月9日)

第26回北陸地方経済懇談会/11月25日

日本経済の活性化と北陸地域の新たな発展に向けて


経団連・北陸経済連合会(北経連)共催の標記懇談会が金沢市において開催された。地元経済人約110名の参加のもと、経団連側は今井会長、古川・辻・片田の各副会長が出席し、北経連首脳と最近の経済動向、社会資本整備、環日本海経済交流等につき意見交換を行なった。また、懇談会に先立ち、北陸先端科学技術大学院大学を訪問し、示村学長から同大学の概要について説明をきくとともに、ボーダーレスな科学技術の発展に寄与する先端的な研究施設を視察した。

  1. 北経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      山田圭藏 会長(北陸電力会長)
    2. 北陸地域は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏への近接性に優れるとともに、自然に恵まれ、歴史・文化の香り高い生活圏を共有している。われわれはこうした特性に自信を持ち、環日本海交流のゲートウェイとしての発展が期待される地域であるという認識を新たにしなければならない。
      この認識に立脚し、北経連では今年度、「日本海国土軸の拠点形成」および「環日本海経済圏等広域国際交流圏形成の推進」という2つの方針に沿った事業を展開している。これらの実現には、北陸新幹線や東海北陸自動車道等、遅れている社会資本と、21世紀をにらんだ情報通信基盤を整備する必要がある。北陸新幹線については、本年9月に自民・自由両党間で新スキームが取りまとめられ、悲願の実現への道筋が見えてきた。
      また、「北陸スーパーテクノコンソーシアム」構想の実現を図り、域内既存産業の活性化、新産業・ベンチャー企業を創出すべく鋭意取り組んでいるので、経団連をはじめ他地域の協力・支援をお願いしたい。

    3. 北陸経済の現状と課題
      八嶋健三 副会長(北陸銀行会長)
    4. 北陸経済の現状については、生産活動等一部に明るさが見られるものの、ほぼ横ばいで推移している。一方、9月の日銀短観によれば、北陸の業況判断は3期連続で改善を示し、先行きも改善が予測されている。北経連が9月に行なった会員企業アンケートでも、前回調査に比べて景気の現状判断が大きく改善し、来期以降も景気回復の期待感が見られる。しかし、全般的には、北陸地域の本格的な回復に転じるのは2000年度以降になるという慎重な見方が大勢であった。
      今後、切れ目のない公共事業の追加に加え、経済政策として、規制緩和の推進、法人税など企業課税の一層の引下げ、設備投資等の促進に寄与する政策減税の拡大等、税制面での改革を求める声が強い。北陸経済の活性化に当たり、基盤となる中小・ベンチャー企業が地域経済に果たす役割は非常に大きく、雇用の拡大の上からも新規産業の創出が必要である。

    5. 産業経済活性化のための取組み
      澁谷亮治 常任理事(澁谷工業会長)
    6. 北経連ではこれまで伝統工芸産業の振興、新技術・新産業の創出等について提言してきている。北陸地域のポテンシャルを発揮するためには、北陸三県による産学官連携を促進し、「北陸スーパーテクノコンソーシアム」機関を設立することが必要である。
      また、北陸の美しい自然、独特の伝統文化等の観光資源を活用し、広域観光の振興を図るため、北経連が官民共同で1972年に設立した北陸広域観光推進協議会や、先般開催した北陸広域連携観光振興会議等において、北陸の新たな観光戦略を検討している。
      情報通信については、21世紀に向けた高度情報通信基盤の整備を促進する重要性に鑑み、北経連・基盤整備委員会のもと、北陸における超高速情報ネットワークの活用施策等について調査・研究を進めている。

    7. 社会基盤の整備促進について
      宮 太郎 副会長(大和相談役)
    8. 整備新幹線の整備促進については、昨年の懇談会で、政府に対して共同で働きかけることを経団連に要望したところ、快諾して陳情に取り組んで頂き感謝している。その結果として、先般、新しい建設基本計画の与党案が明示され、10数年で整備されるという新スキームをおまとめいただいた。
      昨今、地方に対する公共投資については疑問の声も根強いが、北海道や東北に比しても北陸は社会基盤整備が立ち遅れているので、今後、与党案を政府案として決定し、10数年と言わず、せめて10年位で完成させていただくよう、引き続きご支援をお願いしたい。

    9. 環日本海経済交流の推進について
      江守幹男 常任理事(日華化学社長)
    10. 本年3月に決定された第4次北陸地方開発促進計画は、北陸の広域国際交流圏形成に向け、(1)環日本海交流の先導と新たな国際交流の展開、(2)三大都市圏との近接性を生かした連携・交流を掲げている。
      (1)に関して、北経連は広域的な産学官組織である「北陸環日本海経済交流促進協議会」を1992年に設立し、露・韓・中など対岸地域との経済交流の促進に取り組んできている。最重要課題である国際貨物の確保については、港湾施設の整備充実、総合交通ネットワークの構築、物流拠点および情報通信基盤の整備が必要である。
      また、(2)については、三大都市圏を後背地とするゲートウェイとしての機能を果たすために、各都市圏との地域連携軸を形成することが不可欠である。

    11. フロア発言
      黒川誠一 常任理事(セーレン相談役)
    12. 明治維新から今日まで120年間、わが国の人口は4倍に増加してきたが、21世紀以降、人口は減少の一途をたどる。こうした状況下、政官財一体となって戦略を構築し、21世紀に対応しなければならない。
      具体的には、情報化時代の到来に伴い、日本語のあり方を見直すとともに、国民が自ら判断できるように統計を中長期的比較ができるよう整備する必要がある。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 辻副会長から最近の環境問題、古川副会長より活力ある日本海国土軸の形成に関して説明があった後、片田副会長から最近の金融情勢と課題について発言がなされた。
    最後に今井会長が、北陸側の取組みに対して経団連は可能な限り応援を続けていくと総括した。


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